・美術館にて客が「絵のように見える本物の穴」に落ちる事故が発生
・穴の作成者は「黒よりも黒い」と言われる塗料ベンタブラックの使用独占権を持つ芸術家
まるで漫画のような話です。
ポルトガルの美術館を訪れた客が、「一見絵のような本物の穴」に落ちて怪我をするという事故が起きました。
場所はポルトガルのセラルヴェス現代美術館で、問題の穴は、現代彫刻家アニッシュ・カプーア氏の展覧会、“Descent Into Limbo”での展示物でした。穴は約2.5mの深さで、真っ黒に塗られて深さがわからないように作られていたようです。
展示物の周囲には、近づきすぎないように警告する注意書きがあり、スタッフもいたようですが、枠で囲まれてはいませんでした。怪我をしたのは60代のイタリア人の男性客で、穴に転落した経緯は明らかになっていませんが、すぐに病院に運ばれたとのこと。展示物は事故調査のため封鎖中ですが、まもなく再公開される予定です。
シカゴにある「雲の門」に代表される大きすぎる展示物で知られるカプーア氏は、2016年に「ベンタブラック」という特殊な物質の使用独占権を取得したことで一躍有名になりました。英国のサリー・ナノシステム社が開発したこの塗料は、光子をカーボン・ナノ・チューブの間に追い込み、それらが飛び回ってやがて無くなるまで吸収してしまいます。ベンタブラックを塗った物体はわずか0.035パーセントの可視光しか反射しないため、曲線や陰影を見えなくしてしまうのです。穴の深さを正確に測れなくなるのもこのためです。
同作品の展示を以前観た人によると、「本当に穴があるのか、それとも黒く塗られたただの穴の絵なのかわからなかった」と話しています。きっとそれを確かめようとして、思わず足を前に進めてしまったのかも…。
今回の展覧会はベンタブラックの公開前に開かれたものですが、ベンタブラックと同様、深さのわかりにくい「ブラックホール効果」を持つ黒い塗料が使われているようです。
ちなみに日本でも今秋、大分県にて「アニッシュ・カプーア in BEPPU(※公式サイトへ)」が開催される予定です。期間は2018年10月6日〜11月25日まで。「本物か偽物なのかわからない穴」があるかは不明ですが、彼の作品に興味がある人はぜひチェックしてみてください。