「文の響き」だけで百年後も読まれる本を70%の精度で判定することに成功
「文の響き」だけで百年後も読まれる本を70%の精度で判定することに成功 / Credit:Canva
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「文の響き」だけで百年後も読まれる本を70%の精度で判定することに成功 (3/3)

2025.09.30 22:00:30 Tuesday

前ページ機械が読み解いた『100年読み継がれる小説』の特徴

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言葉の響きが未来の古典を作る

言葉の響きが未来の古典を作る
言葉の響きが未来の古典を作る / Credit:Canva

今回の研究が私たちに教えてくれた最も興味深いことは、「100年後も読み継がれるような古典小説と、一時的なベストセラー小説との違いが、意外にもストーリーや登場人物などではなく、使われる『言葉の響き』にあったかもしれない」ということです。

これは非常に新鮮で、文学の研究や本を出版する業界の常識を変える可能性すらある発見です。

一般的には、素晴らしい小説といえば「どんな物語なのか」が評価の基準だと考えられていますが、この研究はむしろ「物語の伝え方」、つまり「どんな言葉を選び、どんなふうに語るか」のほうが、未来の読者の心に長く響くカギになるかもしれないことを示唆しています。

この発見が社会に与える影響は、実は思った以上に広がりそうです。

出版業界においては、どの本を世に送り出すかという選択はとても重要です。

これまでは「売れるテーマ」や「人気のジャンル」、「有名作家の新作」といったポイントを重視してきました。

しかし今回の結果をふまえると、単に「今の売れ筋」を追うだけでなく、「10年後、あるいは100年後にも価値を持ち続ける本とはどんな本なのか?」という新しい視点で考える必要が出てくるでしょう。

最近の技術革新も、この研究成果と意外な形で結びつく可能性があります。

たとえば、現在はAI(人工知能)の時代です。

AIは大量のデータを高速で分析できるため、将来的には今回のような「言葉の使い方」のパターンを分析して、作品を内容とは無関係に評価する手法がさらに発展する可能性があります。

もちろん、これはあくまで筆者の推測であり、実際に活用されるかは今後の技術進歩や出版業界の選択次第ですが、とても興味深い未来の可能性ではないでしょうか。

しかし一方で、この研究の限界についても理解しておく必要があります。

まず、今回分析された小説は1909年〜1923年に出版された英語作品だけです。

つまり、対象となる時代や言語、文化が限られているため、この研究成果がすべての小説やすべての言語に当てはまるとは限らないということです。

さらに、小説の魅力や価値というものは本来とても複雑で、今回の「言葉の響き」という要素だけですべてを説明することはできません。

ですが、それでも今回の研究が文学の分野において非常に意義深いのは確かです。

これまで小説の「持久力」、つまり長く読み継がれる特性はあまり科学的な方法で測ることができないとされてきました。

今回の研究は、この「測れないはずのもの」に対して客観的なデータで迫った貴重な一歩です。

しかも、これまでの研究は多くが「すぐにヒットするかどうか」を予測することに注目していたのに対し、今回は100年後という非常に長い時間を超えて評価されるかを予測したという点でも画期的でした。

将来的には、こうした研究成果が出版社や作家たちにとっての「新しい視点」となり、小説を評価したり、新人作家を見つけたりする際に役立つ可能性があります。

これはあくまで仮説ですが、未来の出版界にとって非常に有益な道具となる可能性を秘めていると言えるでしょう。

もしかすると、私たちが今読んでいる何気ない小説も、言葉の使い方次第で、100年後には世界中で愛される「古典」になっているかもしれません。

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