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Credit: canva
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新たに進化した「エムポックス変異株」を確認、英国保健当局が報告

2025.12.10 12:00:03 Wednesday

これまで世界的な流行を繰り返してきたウイルス「エムポックス(mpox、旧称:サル痘)」

その恐るべき進化の一端が、ここに来て明らかになりました。

英国保健安全保障庁(UKHSA)は、アジアへの渡航歴がある個人から、前例のない「ハイブリッド」なエムポックス変異株を確認したと発表しました。

これは致死率が高いとされる「クレード1(Clade 1)」の遺伝子要素と、2022年の世界的流行を引き起こした「クレード2(Clade 2)」系の要素が組み合わさったウイルスでした。

England health officials identify newly evolved variant of mpox https://www.theguardian.com/world/2025/dec/08/england-health-officials-identify-newly-evolved-strain-of-mpox Never-Before-Seen Strain Of Mpox Virus Identified In England https://www.iflscience.com/never-before-seen-strain-of-mpox-virus-identified-in-england-81833

ハイブリッド型の変異株を検出

英国で確認されたこの新しいエムポックス株が、なぜこれほど注目されているのでしょうか。

その理由は、ウイルスの遺伝子構造にあります。

エムポックスウイルスには、主に「クレード1」と「クレード2」の二つの主要な系統が存在します。

・クレード1(Clade 1):主に中央アフリカで流行しており、一般的に重症化しやすく、致死率が高いことで知られています。

・クレード2(Clade 2):2022年に欧米を中心に世界的大流行を引き起こした系統であり、クレード1に比べて毒性は低いものの、ヒトからヒトへの感染力(特に性的接触を介した伝播)が高い特徴があります。

今回、アジアへの渡航歴を持つ人物から検出されたウイルスは、このクレード1の要素と、クレード2b(2022年流行株のサブタイプ)の要素を併せ持つ「組換え型」であることが判明しました。

科学的に見れば、二つの系統が同じ宿主内で同時感染を起こし、その増殖過程で遺伝子情報が交換され、文字通り「融合」したことを示しています。

UKHSAは、この組換え株の出現について「両クレードが世界的に循環している現状を考えれば予期せぬことではない」としつつも、その重要性を継続的に評価している状況です。

ウイルスが進化する能力を再び証明したことで、専門家たちは警戒を強めています。

では、この組換え型ウイルスは、一体どのような特性を持つ可能性があるのでしょうか?

次ページ懸念されるウイルスの新しい「戦略」

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