放射線耐性菌を食べたハエに起きた変化

今回の研究で選ばれた実験動物はショウジョウバエ(モデル生物としてよく使われる小さなハエ)です。
研究ではまずハエたちにガンマ線(γ線、放射線の一種)という強い放射線を照射し、寿命がどの程度縮まるかを調べています。
結果、線量が増すほどハエの寿命は短くなり、さらにオスのハエはメスより放射線に弱いことが明らかになりました。
これはハエのオスとメスで放射線感受性に差があることを示しており、メスの方がもともとストレス耐性が高いと考えられます。
次に研究チームは、ハエに放射線耐性菌を食べさせてから被曝させるという実験を行いました。
具体的には、新成虫のハエに通常のエサではなくA. pullulansまたはR. taiwanensisの培養ペーストを与えて2日間育て、その後ハエを標準のエサに戻してから高線量のガンマ線を一度に照射しました。
そして、ハエが死ぬまでの日数をカウントしました。
結果、A. pullulansを食べていたオスのハエは、食べていないハエに比べて1日~1.5日ほど長く生存したのです。
一方、メスのハエではA. pullulansを食べても寿命はほとんど変化しませんでした。
つまり、この「食べる放射線対策」はこの実験条件ではオスに限って効果を発揮したのです。
また細胞レベルでも興味深い発見がありました。
通常のエサを食べたオスでは被曝によって腸の細胞に穴が開いたり核が崩れたりする異常が多数見られましたが、事前にA. pullulansを食べたオスでは被曝後も腸の細胞核の形の異常が減る傾向が示されたのです。
コラム:なぜ放射線耐性菌をハエに食べさせたのか?
強い相手を食べたら、自分も強くなる――そんな発想は一見するとファンタジーです。しかし研究者たちがこの発想に乗ったのは、わりと現実的な“動機”があったからです。出発点は、菌類(fungi(カビや酵母の仲間))が昔から「薬の倉庫」だったことです。これまでにも抗生物質のように、命に直結する多くの分子が菌から見つかってきました。つまり菌は、見た目は地味でも、体の中に“効く小さな分子”を抱え込める存在だ、という前提があります。そのためもしチェルノブイリ原発事故の炉心内で生きているような菌類がいたとするなら、放射線耐性を発揮する分子を作れるように進化して耐性に必要な分子たちを自前で抱えている可能性があるのです。もしそうならその菌を食べた生物にも放射線耐性の恩恵が得られるかもしれません。ただし著者らは、主役はタンパク質ではなく小さな分子(代謝物)かもしれないと述べています。タンパク質のような巨大分子が消化によって元の形や機能を失ってしまうのは人間でもハエでも同じです。そのため著者らは「食べる放射線耐性」は消化の影響を受けにくい「小分子」が担っている可能性があると考えているようです。
一方で、比較のため試されたもう一種の放射能耐性菌R. taiwanensisでは、残念ながら放射線防御の効果は見られませんでした。
R. taiwanensisを食べたハエは、オス・メスともに寿命が延びることはなく、条件によってはかえって寿命が短くなる傾向すら示したのです。
どうやら「放射線に強い菌なら何でもよい」というわけではなく、菌の種類によって効果に当たりだけでなく足を引っ張る場合もあるようです。




























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