行き来できる並行宇宙ネットワークの理論モデルが発表
行き来できる並行宇宙ネットワークの理論モデルが発表 / Credit:川勝康弘
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行き来できる並行宇宙ネットワークの理論モデルが発表 (2/3)

2026.02.02 19:00:36 Monday

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『並行宇宙への回線』は理論上開かれている

『並行宇宙への回線』は理論上開かれている
『並行宇宙への回線』は理論上開かれている / Credit:川勝康弘

「ネットワークで宇宙をつなぐ」というアイデアが本当にうまく動くのか?

答えを得るために著者たちは、「結び目でのエネルギーのつり合い」「重力のゆらぎの安定性」「量子もつれの量」「有限サイズのネットワークの真空状態」「並行宇宙としての解釈」という五つのポイントについて評価することにしました。

結果、条件が適切なら全てのポイントで有望な結論が得られました。

第一の結論:結び目では「入る量=出る量」が守られる

宇宙どうしがつながる「結び目」は、水道管の合流点みたいな場所です。

そこでは、「どの宇宙からどれだけエネルギーや光が流れ込んで、どれだけ出ていくか」をきちんと計算すると、必ず“入る量=出る量”になることがわかりました。

おもしろいのは、枝にあたるそれぞれの宇宙では、重力の強さや物質の性質など“物理のルール”が少しずつ違っていてもかまわないのに、結び目全体としてはエネルギーの出入りがきっちり帳じりされているという点です。

つまり、「宇宙ネットワークの交差点では、世界共通のエネルギー保存ルールがちゃんと働いている」と確かめたのが第一の結論です。

第二の結論:ネットワークが維持される条件が分かった

宇宙をつなぐ面である結び目の近くでは、池のさざ波のように、重力の小さなゆれ=重力の波が広がります。

もし条件が良くないと、この波が時間がたつほどどんどん大きくなって、ネットワークが崩壊してしまいます。

そこで論文では、「どんな値のときに波が暴走せず、おとなしくおさまるのか」を式を使って詳しく調べ、安全なパラメーターの範囲をはっきり示しました。

その条件さえ守れば、重力の波は暴れずに、ネットワーク全体の宇宙は安定して存在し続けられる、というのが第二の結論です。

第三の結論:量子もつれでネットワークの「複雑さ」をはかれる

この研究では、「この宇宙ネットワークはどれくらい込み入っているのか?」という“複雑さのものさし”を作ろうとしました。

そこで使われたのが、量子もつれ(量子の世界で、遠く離れた粒子どうしが不思議に結びついている状態)の量です。

著者たちは、量子もつれを使って3種類の“ネットワークエントロピー”(ネットワークの複雑さを表す数)を定義し「量子もつれ」を使えば、宇宙ネットワークの“ごちゃごちゃ度”を数字で評価できることがわかりました。

第四の結論:枝が有限のとき、「何もない空間」の姿が変わる

宇宙の枝が無限に長い理想図だけでなく、「長さに終わりがあるネットワーク」を考えると、内部の「何もないはずの空間(真空)」の姿がガラッと変わることが計算上分かりました。

計算してみると、その真空は一枚板の空間ではなく、いくつもの特別な空間パッチ(ソリトン)をつぎはぎしたパッチワーク宇宙として現れます。

その中でも自由エネルギーがいちばん小さい貼り合わせ方が、「いちばん安定した本物の真空」として自然に選ばれる、という結論です。

第五の結論:物理法則を守ったまま「行き来できる並行宇宙」を描ける

最後の結論は、このネットワークの宇宙を、「行き来できる並行宇宙」のモデルとして読めるというものです。

ネットワークの中のそれぞれの枝は1つの宇宙だと考えられます。

ある枝は平らな宇宙、別の枝はふくらんでいく宇宙、ささらに別の枝は逆向きに曲がった宇宙、といった具合に、宇宙ごとに形も重力の強さも、存在する粒子の種類もバラバラでかまいません。

それでも、結び目(ネットブレーン)での“つなぎ方のルール”さえ守れば、エネルギー条件などの基本的な物理法則を破ることなく、光や波(場)がある確率で別の宇宙へ抜けていくことができると示されました。

実際に、平坦な宇宙・ふくらむ宇宙・逆向きに曲がった宇宙を結んだ三重宇宙モデルや、「重力ありの宇宙」と「重力なしの宇宙」をつないだモデルがつくられ、どちらも物理的に無理のない形で実現できることが示されています。

このような設定のもとで、光や波をある宇宙からネットブレーンに向かって送ると、一部は他の宇宙へ透過していくことが理論的に示されました。

どの宇宙にどれだけの確率で抜けるかは枝の本数や接続条件で決まり、百パーセントの成功は保証されませんが、「確率的な意味で宇宙をまたぐことができる」のです。

(※宇宙をつなぐ枝の本数pが増えるほど、別の宇宙へ抜ける成功確率はだんだん小さくなる、といった定量的な関係も数式で求められています。より具体的にはp本の宇宙がつながるとき、単純な光や波が宇宙Aから出て、宇宙Bに届く最大成功確率は (2/p)² 程度であると考えられています。)

著者たちは具体例として、平坦な宇宙・ふくらむ宇宙・逆向きに曲がった宇宙を一つのネットブレーンで結んだ「三重宇宙モデル」や、片方の宇宙には重力があり、もう片方には重力がなく放射だけが飛び交う「重力なし宇宙モデル」をつくり、どちらの例でもネットブレーン上の物質が弱エネルギー条件やヌルエネルギー条件など、教科書的な条件をきちんと満たしていることを確かめました。

これは、多くの通り抜け可能なワームホール理論が「負のエネルギーをもつ奇妙な物質」を必要とするのとは対照的です。

理論そのものは高度ですが、イメージとしては「たくさんの宇宙を一本一本の配線として描き、それを一つの結び目でつなぐことで、行き来可能な並行宇宙ネットワークをつくる」というものになります。

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