がん患者がアルツハイマー病を発症しにくい理由が見えてきた
がん患者がアルツハイマー病を発症しにくい理由が見えてきた / Credit:Canva
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がん患者がアルツハイマー病を発症しにくい理由が見えてきた (3/3)

2026.02.04 20:00:04 Wednesday

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シスタチンCが開くアルツハイマー病治療の可能性

シスタチンCが開くアルツハイマー病治療の可能性
シスタチンCが開くアルツハイマー病治療の可能性 / Credit:Canva

今回の研究の一番大きな意義は、「がんの人はアルツハイマー病になりにくいらしい」という、長年“統計の数字”として語られてきた現象に、分子レベルの説明の一つの候補が示されたことです。

体のどこかにあるがんがシスタチンCというタンパク質をたくさん分泌し、それが血液を流れて脳に入りこみ、TREM2というスイッチを通してミクログリアのゴミ掃除を強めます。

その結果としてアミロイドβのプラークが減り、記憶力もある程度守られる──という流れが、マウスの実験でかなりはっきりと示唆されました。

この研究は将来の治療法を考えるうえで重要なヒントをくれます。

現在のアルツハイマー病の薬は、「アミロイドβが新しくたまるのを防ぐ」「作られる量を減らす」といった方向が中心です。

それに対して、シスタチンCはすでにできてしまったプラークにくっつき、ミクログリアのTREM2を通じて「今あるゴミ山をどう片づけるか」に働きかけます。

研究グループを率いるルー博士らは、「体の外側にできたがんが分泌するシスタチンCが、脳のミクログリアを通じてすでにできてしまったアミロイド斑を分解させる。これは、これまでの“アミロイドがたまらないようにする”戦略とは違う、新しい治療の道を示している」とまとめています。

もっともアルツハイマー病と診断されたら「シスタチンCを注射しよう」と勝手に判断するのは危険です。今回の結果はすべてマウスでの実験であり、人間の脳でも同じことが起こるとはまだ言えません。またたとえシスタチンCが人間の脳内でミクログリアのお掃除能力を高める効果があったとしても、適切な量でなければ危険です。シスタチンCによってミクログリアがお掃除を頑張り過ぎて、脳にダメージを与えてしまう恐れもあるからです。

それでも、この研究は「がん神経科学」という新しい分野の広がりを象徴しています。

これまで人間は植物や細菌の作る成分を薬に転用してきました。

たとえば、最初の本格的な抗生物質として知られるペニシリンは、青カビが分泌する物質から見つかりましたし、マラリア治療に使われてきたキニーネは、南米のキナノキという樹木の樹皮に含まれる苦い成分が元になっています。

また、コレステロールを下げる薬として広く使われているスタチン系の薬は、カビの仲間がつくる物質からヒントを得て開発されたものです。

このように、「自然が偶然つくってしまった化学物質」を見つけてきて、人間が少し手を加え、病気の治療に役立てるという流れは、医学の歴史を通じて何度も繰り返されてきました。

今回の研究はそのあくなき探索に「がん細胞」が含まれ得ることを示します。

もしかしたら未来の薬局では、がん細胞由来の様々な薬が商品棚に並んでいるかもしれません。

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がん患者がアルツハイマー病を発症しにくい理由が見えてきた (3/3)のコメント

ゲスト

逆はあるのかな
アルツハイマー患者は癌になりづらいみたいな

    ゲスト

    やっぱりそれが気になりますよね。
    ガンがアミノイドβを嫌うのであればそれががん細胞の中にたまると細胞が死滅するのではないかと。

鈴木

モノクローナル抗体のように、がん細胞の増殖能力を利用した医療技術の開発はありましたが、「悪液質」というかがん組織の分泌物の利用可能性は驚きました。
将来は、たとえば「こぶとりじいさん」のような(悪性の低い)腫瘍組織の移植や体外のがん培養組織への血液透析のような利用もでてくるかもですね。

ひろあき

>研修医だったころ、上司の病理学者から「アルツハイマー病の患者さんって、あまりがんになっていない気がする」と何気なく言われたのをきっかけに注目し始めました。

本文のこの箇所、逆では?
「がん患者が、あまりアルツハイマー病になっていない気がする」
そうでないとこの記事の内容にそぐわないのでは。

鈴木

本日、別の科学記事サイトで「がん組織が神経を介して免疫系を抑える」という趣旨が掲載されました。本庶佑のノーベル賞受賞研究:免疫チェックポイント阻害因子もがん細胞がリンパ球の働きを抑える趣旨です。ならば、20代や50代女性に多い自己免疫疾患を、がん細胞をの免疫寛容力を使って改善できるかもしれません。

逆に、がん患者の末期の激やせや微熱・だるさは。がん組織に対抗するための免疫系の暴走によるとされています。ならば、免疫機能低下で日和見感染や歯周病を繰り返している方への免疫力強化に使えるかも。

あと、がん組織が勝手にホルモンを作る場合があるようです。抗利尿ホルモンのように消費が早く一定量の血中濃度がないとおしっこの駄々洩れとなる場合は、ほるもん産生機関としてがん細胞が使えそうです。

心臓は細胞の更新が不活発な一方で、狭心症や心筋梗塞といった血管障害が起きてきます。ならば、がん組織の血管新生能力が活用できないかしら

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