科学はどこまで効果を測れているのか
体験談が数多く語られる一方で、科学的検証はまだ初期段階にあります。
HHPの研究部門は、2021〜2024年にかけて58人の退役軍人を対象とした観察研究を実施しました。
そのうち45人がアヤワスカ、13人がシロシビンを用いたリトリートに参加しています。
その結果、両グループでうつ症状は平均29%、PTSD症状は26%減少しました。
不安や睡眠、情緒的安定、生活の質にも改善が見られたと報告されています。
PTSDの診断基準を満たしていた参加者のうち、8割以上が、治療後には基準を満たさなくなったという点も注目されます。
ただし、この研究はプラセボ対照の無作為化臨床試験(=効果のない偽薬と比べて、本当に効いているかを確かめる厳密な試験)ではありません。
そのため、症状の改善がアヤワスカそのものによるものなのか、心理的サポートやリトリートという環境全体の影響なのかを切り分けることはできません。
さらにアヤワスカは、精神活性物質DMTとβ-カルボリン類を含む植物性混合物で、成分濃度が一定ではありません。
この点が、単一分子であるMDMAやシロシビンと比べ、臨床研究を難しくしています。
こうした課題を踏まえ、テキサス大学オースティン校デル医学校のサイケデリック研究チームは、HHPと協力し、PTSDをもつ退役軍人の脳活動がアヤワスカ体験後にどのように変化するかを調べる研究を進めています。
脳画像や脳波(EEG)を用いて、生物学的な指標としてPTSDの変化を捉えようとする試みです。
正式な治療薬となるか?
研究者たちは、アヤワスカが、固定化した心理パターンを一時的に崩し、その後に脳の可塑性を高める可能性があると考えています。
ただし、それだけで回復が完結するわけではありません。
HHPのリトリートでは、体験後の振り返りや心理的統合、生活習慣の見直しが重視されています。
実際、ギル氏自身も、睡眠や運動、栄養、自然や人とのつながりを意識したことで、回復が進んだと語っています。
先住民の知恵として受け継がれてきたアヤワスカが、現代医学の文脈でPTSD治療にどこまで貢献できるのか。その答えはまだ出ていません。
しかし、心の回復に新たな可能性を示していることだけは、確かなようです。
























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