美しさは脳が「驚き」を解決した時に立ち上がる
美しさは脳が「驚き」を解決した時に立ち上がる / Credit:Canva
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美しさは脳が「驚き」を解決した時に立ち上がる (2/3)

2026.02.10 18:30:46 Tuesday

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「驚き」と「美」は関連している

「驚き」と「美」は関連している
「驚き」と「美」は関連している / Credit:Canva

「驚きは美しさを強めるのか?」――この問いに答えるために研究者たちがやったのは、言ってしまえば「触って確かめる美術展」を、かなり科学的に組み立て直すことでした。

会場は大学の建物内に作った展示空間で、参加者は作品の前に立ち、手で自由に触って鑑賞します。

そして鑑賞が終わるたびに、その作品を「どれくらい美しいと思ったか」「どれくらい快いと感じたか」「どれくらい面白いと思ったか」などを、ゼロから百の目盛りで答えていきます。

さらに鑑賞中には脳波を測り、触った瞬間に脳が「予想と違う!」と反応したときに出やすい“驚きのサイン”も拾い上げました。

作品は合計十六点。

見た目がほぼ同じ作品がペアになって8組用意されました。

ただし片方は見た目どおりの触り心地(予想が当たる作品)で、もう片方は見た目に反する触り心地(予想が外れる作品)になっています。

もし先に述べたように美には「すぐ気持ちいい道」と「いったん違和感を抱えて、理解し直す道」の二つがある場合、この見た目の「素直さ」と「違和感」にその結果が両方浮かんでくるはずです。

結果、平均点だけを見ると見た目どおりの作品のほうが、美しさ・快さ・面白さのすべてで高得点だったことがわかりました。

美しさは見た目どおりが平均で約31.5点、裏切る作品は約38.3点。

快さは約43.1点に対して約36.7点。

面白さも約45.7点に対して約36.7点でした。

どれも1〜2割ほど、見た目どおりが上回っています。

触った瞬間の違和感は、少なくとも“平均的には”評価を下げやすい――ここまでは、人間らしい反応に見えます。

これは予測を裏切らない「素直さ」が理論的には情報処理を減らして「気持ち良さ」や「美しさ」などの評価につながることを示唆しています。

ところが、脳波が語り始めると話がねじれます。

触った瞬間の脳波を解析すると、作品のペアごとに「驚きの強さ」に差があることが分かりました。

たとえば、苔の玉のペアなど、一部のペアでは「ミスマッチ信号」が強く出ていることがわかりました。

さらに研究者たちは、「驚きの脳波の大きさ」と「美しさ・気持ちよさ・おもしろさの点数」の関係を統計的なモデルで詳しく調べてみました。

すると驚きの脳波が強い作品ほど、その作品を「美しい」と評価する傾向が見られたのです。

ただすべての不一致作品が強い「驚きのサイン」を出したわけではなく、本物の苔とニスで固めた苔のペアなど、いくつかの組だけが、とくにはっきりとしたミスマッチ陰性電位を引き起こしていました。

見た目と手触りのギャップが、脳にとって「ちゃんとした予想外」として登録されるかどうかは、作品ごとに違っていたのです。

「予想の裏切りがなんでも驚きサインにつながるわけではない」と言えばわかりやすいでしょう。

裏切りがあり、それが脳内の「驚きのサイン」の鐘を鳴り渡せることに成功したときには、人は美を見いだしやすくなるのです。

先ほどの続編の例で言えば、視聴者の期待を裏切るだけで「驚きのサイン」を出せない場合、美を感じさせられないこともあります。

さらにクセの強い結果がもう一つあります。

驚きと美しさの結びつきは、快さが高いと弱まるのです。

言い換えると、「めちゃくちゃ気持ちいい!」が先に立つと、驚きが美しさに変換されにくいわけです。

逆に、快さがあまり高くないときほど、驚きが美しさに繋がりやすい。

これ、少し意地悪なたとえをすると、「気持ちよすぎて、考える前に満足しちゃう」と、美しさが育つ前に終わってしまう、みたいな構図です。

続編の続編の例でもファンが心地よさを高く感じている時は、驚き要素をいくら巧妙に詰め込んでも「美」の評価が上がりにくいかもしれません。

この結果から研究チームは、「美しさ」と「快楽」や「興味」は重なり合うところもあるけれど、同じものではないと結論づけています。

見た目どおりで安心できる作品は、たしかに多くの人にとって気持ちよく、分かりやすく、興味深いものになりがちです。

しかし、その一方で、見た目と手触りのあいだにちょうどよい量の“ずれ”があり、その驚きを自分の頭でうまく説明できたときにこそ、「美しい」という特別な感情が強く立ち上がる――。

この研究は、そんな美の姿を、実際のアート体験と脳の反応の両方から示唆したと言えるでしょう。

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