『正直さ』と『やさしさ』を同じ箱につめ込んでしまう私たち

「これ、似合ってる?」と聞かれて、答えに困った経験はありませんか?
あるいは、あなた自身が「正直に言って」と言いながら、心の中では“できれば優しく頼む”と祈っていた経験はないでしょうか?
恋愛の会話には、こういうややこしさが平気で混ざります。
とはいえ、正直さは恋人関係の土台でもあります。
嘘が増えれば信頼は削れ、長く付き合うほどダメージも大きくなります。
どんな服を着ても「似合っている」「ステキ」「最高」と肯定的な意見しか聞こえてこない相手に対して、人間は不信を募らせていくこともあります。
多くの研究でも、誠実さは相手選びや関係の満足度に深く関わるとされています。
けれど同時に、人は「正直がいつでも正解」とも思っていません。
相手を傷つけないための遠回りなら、嘘でも許される場面があり、それは「やさしい」と評価されることもあります。
たとえば、相手が緊張でガチガチになりながら発表を終えた恋人に、「今の、正直イマイチだったよ」と本音をぶつけるのが本当にベストかどうか。
多くの人は「今はとりあえず『よく頑張ったね!』でいいんじゃない?」と感じるはずです。
つまり人間は、恋愛になると急に「正しさ」と「やさしさ」を同じ箱に詰め込もうとして、箱ごと落としがちなのです。
そこで登場するのが、今回の研究の主役である“優しい嘘”です。
これは、自分の得のためではなく、相手の気持ちを守るための嘘です。
恋愛に関する研究でも、相手のためにつく“優しい嘘”は、自分を守るためだけの嘘よりもずっと許されやすく、ときには「厳しい本当のこと」よりも道徳的で信頼できるとさえ評価されることがあると報告されています。
たとえば恋人が誕生日やクリスマスの日に気合を込めて着込んでくれた服が壊滅的にダサくても「その服いいね」と言ってあげる──そういった嘘は、本人の評価を守り、関係の雰囲気を明るく保つ働きをします。
一方で、自分のイメージや得のためにつく「自分本位な嘘」は、基本的にはNGに近い扱いを受けます。
同じ「嘘」でも、誰を守るためについたのかで、受け止められ方がまったく変わってしまうのです。
また嘘とは違いますが、正確性を損なう要因として古くから言われているのが、「ポジティブな思い込み」です。
人は少しだけ自分や恋人をよく見積もっているほうが、短期的には幸福感が高まり、ストレスにも強くなりやすいとされています。
恋愛関係でも、「うちのパートナーは他の人よりちょっとイケてる」と信じている人ほど、満足度が高く、関係も長続きしやすいというデータがあります。
優しい嘘は、こうしたポジティブな思い込みを守るクッションのような役割を果たしている可能性があります。
真実をそのまま伝えると、自分や相手のセルフイメージがガクッと下がりそうなとき、ふわっと柔らかい言い方で包み直すことで、「現実」と「自尊心」のあいだの衝突をやわらげてくれるのです。
さらにもう一枚、話を深くするカードがあります。
それが「嫌なことがあっても立ち直る力」です。
立ち直りが得意な人は、つらい出来事があっても気持ちを整えたり、見方を切り替えたりして、ダメージを回復しやすい一方で、立ち直りが苦手な人は、同じ言葉でも刺さり方が強くなりやすい傾向があります。
正直さ、優しい嘘、思い込み、立ち直る力……これらの要素は、どれも絡み合っています。
そこで今回の研究者たちは、交際中の人たちを対象に、「恋人から真実を聞きたい気持ち」と「優しい嘘で包んでほしい気持ち」が、関係の満足度や立ち直りやすさとどう結びつくのかを確かめようとしました。
ここを調べることで、優しい嘘は、関係がうまくいっているからこそ必要な“思いやり”なのか、関係がしんどいときにだけ登場する“応急処置”なのかも見えてくるはずです。
またどんな性質を持つ人が、優しい嘘を好むのかという心理的な傾向もわかってくるでしょう。
























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