ハトのドローン化は技術的に可能?倫理的には?
とはいえ、この技術がどこまで科学的に確立されているのかについては、慎重な見方が必要です。
鳥の脳を電気刺激して行動を誘導する研究自体は、国際的な学術研究として以前から行われてきました。
ただ、多くは実験室レベルの試験であり、長期間・広範囲で実運用するプラットフォームとして確立した例は限られています。
Neiryの取り組みについても、今回参照した報道や同社の発表の範囲では、具体的な査読付き論文や詳細なデータは示されていません。
また、外部の独立機関がどこまで検証しているのかについても情報は限られています。
つまり、企業の発表は技術的な可能性を示すものではあるものの、第三者による裏付けはまだ十分とは言えない段階です。
社会の反応も賛否が分かれています。
批判の中心にあるのは、動物の自律性をどこまで侵害してよいのかという点です。
人間が犬や馬を訓練して指示に従わせることと、電極によって「そちらへ行きたい」という気持ちを脳内に直接作り出すことは同じなのか、という疑問です。
企業は社内のバイオエシシストと協議し、問題はないと判断しているとしていますが、外部の倫理学者からは「生き物を道具のように扱っているのではないか」という懸念も出ています。
また、軍事や監視への転用可能性も無視できません。
ハトは都市環境に溶け込みやすく、金属製ドローンよりも気づかれにくいと指摘されています。
企業は管路や送電線などインフラの点検、環境モニタリングといった民生利用を目的としていると強調していますが、カメラを載せた飛行体が持つ二面性に不安を覚える人も少なくありません。
さらに、Neiryの経営陣は、長期的には生体の脳と人工知能を組み合わせて人間の能力を高める構想にも言及しています。
これは、人間の身体や脳をテクノロジーで拡張しようとする考え方とつながっており、ハトや牛を使った実験はその入り口にすぎないという位置づけです。
このような方向性は、技術的な期待と同時に、「どこまで許されるのか」という問いも投げかけています。
今後の焦点は、この仕組みが本当に安全で、同じ条件で何度も安定して動作することを第三者が確かめられるかどうか、そして社会としてどの範囲まで許容するのかを議論できるかどうかにあります。
生きた鳥をドローンとして使うという発想は、技術の可能性と倫理の境界線を私たちに突きつけています。
空を飛ぶハトが、ただの街の風景であり続けるのか、それとも新しい監視と拡張の時代の象徴になるのかは、これからの検証と議論にかかっているのかもしれません。



























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