原始ブラックホールの内部には「別宇宙」が存在するとする新理論が発表
原始ブラックホールの内部には「別宇宙」が存在するとする新理論が発表 / Credit:川勝康弘
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原始ブラックホールの内部には「別宇宙」が存在するとする新理論が発表 (2/3)

2026.02.20 18:30:54 Friday

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暗黒物質は別宇宙に由来するかもしれない

暗黒物質は別宇宙に由来するかもしれない
暗黒物質は別宇宙に由来するかもしれない / Credit:川勝康弘

別の宇宙のカケラが暗黒物質の正体なのか。

この大きな問いに近づくために、まず研究者たちがやったのは、「どれくらいの頻度で“別宇宙パッチ”が生まれるのか」を見積もることです。

ここでいう別宇宙パッチとは、インフレーション(宇宙の超高速膨張)がたまたま止まらず、永遠に続いてしまった領域のことです。

インフレーションの終わりごろ、宇宙には「ふくらみ方のムラ」があります。

そのムラがふだんより少し大きくなる時間帯があったと仮定して、「もしこの時期だけ宇宙がいつもより“ガタガタ”していたら、どうなるだろう?」と考えます。

そのうえで、インフレーションの間に生まれる無数のムラが生み出す領域を、「巨大なくじ引き」のように考えます。

ひとつひとつの領域にランダムにゆらぎの大きさを割り当て、ある決まった値、つまり「時空のでこぼこが1を超える」という条件を超えたものだけが「永遠にふくらみ続ける領域」になる、というルールです。

ゆらぎが大きいほど当たりを引きやすくなりますが、それでも全体の中ではごくまれな出来事にとどまります。

論文では、この“当たり”の出る割合を、山なりの確率分布(釣鐘型の分布)を使ってきちんと計算し、「永遠にふくらむ領域」が全体の中でどれくらいの割合になるかを求めています。

次に、その永遠にふくらむ領域ひとつぶんの「重さ」を見積もります。

インフレーションが終わる直前のエネルギーの濃さや、宇宙のふくらむ速さをもとに計算すると、その領域にふくまれる質量は、計算上の目安として太陽の一兆分の一くらい、つまり小惑星ほどの重さになることが分かります。

これは、今の観測ではまだはっきりと絞りきれていない質量帯であり、原始ブラックホールが暗黒物質の候補として生き残っている“すき間”の領域です。

「外から見ると小惑星くらいの重さなのに、中では永遠インフレーションなんて大げさではないか?」と思うかもしれませんが、先ほど触れたように「外側から見た重さ」と「内側で起きていること」は、一般相対性理論重力を時空のゆがみとして扱う理論)の世界では別物として振る舞います。

ふつう私たちは、容器の外側の大きさを見れば、中に入る量もだいたい見当がつく、と考えがちです。

しかし、時空そのものが曲がっている世界では、「外から見たサイズ」と「内側を歩いたときの距離」は、必ずしも素直に対応しません。

たとえば、長い廊下をぐるぐる折りたたんで、意外と小さな建物の中に全部収めてしまうことを想像してみてください。

建物の外から見れば、せいぜい数十メートル四方の箱にしか見えないのに、中に入って廊下を歩くと、何百メートルも進んでも出口に着かない、ということが起こりえます。

時空が曲がった世界では、これとよく似たことが、空間そのものの形として起きます。

外からの重力の強さや「地平線」の大きさは、境界付近の情報だけで決まってしまい、内部にどれくらい“折りたたまれた空間”が続いているかまでは反映されないのです。

永遠領域の出る割合と、一つあたりの重さが分かれば、それらを掛け合わせることで、「永遠領域がつくる原始ブラックホール」が宇宙全体にどれくらい存在するかを見積もることができます。

論文によると、インフレーション中のゆらぎの強さと、それが続いた期間をある程度うまく選ぶと、こうして生まれる原始ブラックホールの総量が、ちょうど今私たちが測っている暗黒物質の量と同じくらいになる条件が、条件付きで見つかるといいます。

つまり、個数と重さの両方の意味で、「暗黒物質=別宇宙のカケラとしての原始ブラックホール」というシナリオが、机上の空想ではなく、ちゃんと数字の上でも成り立ちうると示されたわけです。

研究者たちはさらに、これまでよく研究されてきた「放射が特に濃い部分が自分の重さでつぶれて原始ブラックホールになる」という従来の仕組みとも比べました。

こちらも暗黒物質の候補として有名ですが、インフレーション中のゆらぎが「ある程度広い範囲」にわたって強くなっていた場合には、新しく提案された「永遠にふくらむ領域」から原始ブラックホールができるメカニズムのほうが、より効率よくブラックホールを作り出せることが分かりました。

もし宇宙が当時、広いスケールで強いゆらぎを経験していたなら、暗黒物質の主役は、従来型の原始ブラックホールではなく、「別宇宙のカケラ」のほうだったかもしれない、ということです。

そしてこのシナリオには、重要な“おまけ”があります。

ゆらぎが大きいと、その揺れが重力そのものを振動させ、重力波という時空のさざ波を生み出します。

たくさんの揺れが重なり合うことで、ある周波数の帯域に「重力波のざわざわした背景」ができあがります。

論文の計算では、もし暗黒物質が本当に小惑星質量の原始ブラックホールでできているなら、ミリヘルツ帯と呼ばれる周波数で、ほぼ平らな重力波の背景が立ち上がるはずだとされています。

著者たちは、「もし暗黒物質が永遠インフレーション由来の原始ブラックホールだとしたら、このミリヘルツ帯の重力波背景が見つかることは“逃れられない予言”になる」と書いています。

つまり、このざわざわを見つけるか見つけないかが、「別宇宙のカケラ=暗黒物質説」の運命を大きく左右する、ということです。

理論は大胆ながらも、検証する方法まで踏み込んで提示されているのは魅力的と言えるでしょう。

次ページ無数の別宇宙が、黒い点となって夜空にぶら下がっている

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