「氷の核となる真菌」が天候操作につながる可能性
この発見が注目されるのは、微生物の不思議な能力が分かったからだけではありません。
氷形成の仕組みは、そのまま雲や降水の仕組みと深くつながっているからです。
雲の中には、小さな水滴や水蒸気が漂っています。
しかし、それだけでは雨や雪にはなりにくく、どこかで氷の結晶が生まれることが重要になります。
氷ができると、その表面に水蒸気が集まりやすくなり、粒が大きく育って、やがて雪や雨として落ちていきます。
つまり、氷の結晶がどれだけできやすいかは、降水の始まりを左右する重要な条件なのです。
この性質を人工的に利用する技術が、「人工降雨」です。
雲に粒子をまいて氷晶核を作りやすくし、雨や雪を促そうとする方法で、これまで主にヨウ化銀が使われてきました。
ところが、こうした無機粒子には、環境中に撒く物質としての懸念や、効率の限界があります。
そこで今回見つかった真菌のタンパク質が、新しい候補として注目されるわけです。
このタンパク質は、非常に低い濃度でも強い氷形成活性を示し、しかも細胞にくっついていなくても、水の中に溶けた状態だけで働けるという特徴があります。
そのため、将来的には従来材料より扱いやすい氷形成材料になる可能性があります。
また、応用先は天候操作だけではありません。
論文では、人工降雪や凍結保存などへの利用可能性にも触れられています。
たとえば食品の冷凍や生体試料の保存では、「どの温度で、どのように氷を作るか」が品質や損傷の大きさを左右します。
真菌のタンパク質のように、少量で効率よく氷形成を誘導できる分子があれば、凍らせ方をより細かく制御できる可能性があります。
さらに重要なのが、気候モデルへの影響です。
真菌は土壌中に広く存在し、その胞子や分泌されたタンパク質が風で大気中に運ばれる可能性があります。
もしそれらが雲の中で実際に氷形成に関与しているなら、これまでの気候予測では、生物由来の氷晶核の影響が十分に評価されていなかったことになります。
もちろん、今は「この真菌タンパク質を使えば自在に雨を降らせられる」と言える段階ではありません。
ただ少なくとも、自然界にはすでに、雲の中の氷形成を強く左右しうる生体分子が存在していたことが、今回かなり具体的に見えたのです。






























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