カンブリア爆発の前に既に爆発は始まっていたかもしれない

今からおよそ5億4000万年ほど前、地球上には、化石記録の上では、私たちが知る動物の姿はまだほとんど見られませんでした。
この時代を「エディアカラ紀」と呼びますが、このころの生き物は、今日の私たちが知る「動物」とはずいぶん違った姿をしていました。
彼らは多くが薄っぺらくて、クラゲや海藻のように平たい体をもち、口や目、足といったはっきり確認できる器官が見えないものが多くあります。
そのため、どうやって暮らしていたのか、そもそも本当に動物だったのかさえはっきりとはわかっていないのです。
ところがその直後、およそ5億3500万年前ごろに「カンブリア紀」という新しい時代に入ると、状況は一変します。
突然と言っていいほど、まるで生物たちが「動物らしい動物」に目覚めたかのように、さまざまな形をした複雑な体つきの生き物が現れはじめるのです。
口や腸をもち、自分でエサを捕まえて食べ、海底を自由に動き回ることができる、今日の動物の祖先たちです。
この出来事はあまりに急激で派手だったので、「カンブリア爆発」と呼ばれ、長年、生命進化の謎のひとつになってきました。
しかし近年になり、新しいタイプの証拠が次々と登場し、研究者たちのあいだで大きな疑問が広がっていました。
特に注目されたのが、DNAを使った研究です。
生き物の体の設計図であるDNAは、時間とともに完全に一定ではないものの、ある程度の規則性をもって変化していきます。
そこで、異なる動物同士のDNAをくらべて「違いの大きさ」を調べると、その生き物同士がいつごろ別れたか、つまり進化した年代を推定することができるのです。
すると驚くべきことに、多くの動物グループは化石として姿が確認されるはるか以前、エディアカラ紀の時代にはすでに分かれていたらしいことが示唆されてきました。
もしこのDNAの分析結果が正しければ、主要な系統の分岐という意味での「本当の始まり」はエディアカラ紀にあり、カンブリア爆発はその成果が化石記録に大きく現れた出来事だった可能性があります。
ところが、不思議なことに、カンブリア爆発より前の時代には、それらの動物たちの「体そのもの」を示す化石がほとんど見つからないのです。
これはまるで、「足跡や時計が示す時間にはそこに動物がいたはずなのに、肝心な本人たちが見つからない」という、まさに謎の状態でした。
これが、進化生物学者を長年悩ませてきた大きなジレンマ、すなわちいわば「エディアカラ紀の空白」です。
理由の1つが、化石としての残りにくさでした。
エディアカラ紀に生きていた生物のほとんどは、砂や泥の表面に薄く押しつぶされた「影絵」のような形でしか化石として残っていません。
そのため、体の内部の構造、たとえば食べ物を消化するための腸やエサをとるための口といった重要な部分が、ほとんど確認できないのです。
そんな中、この長年の謎に大きく切り込むことになったのが、中国南西部の雲南省にある「江川生物群(Jiangchuan Biota)」という化石産地です。
この場所は実は以前から研究者たちに知られており、エディアカラ紀後期の海を研究する重要な地点として注目されていました。
しかしながら、これまでよく知られていたのは主に藻類、つまり海藻の化石で、動物化石はほとんど知られていませんでした。
しかし今回の研究で、ついに本格的な動物化石が江川生物群から多数発見されました。
こうして長く見えにくかったエディアカラ紀の動物世界からは、いったいどんな動物が現れてくるのでしょうか?






























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