サイコパスは悲しみを感じると、そこから目を背けて「怒り」に注目する
実験で特に重要だったのは、悲しみ誘導の前後で注意の向きがどう変わったかです。
まず、悲しみ誘導を行う前の段階では、サイコパシー傾向の強さによって、注意の向きに大きな違いは見られませんでした。
つまり、普段の状態では、サイコパシー傾向が高い人だけが特別に悲しい顔を避けたり、怒った顔を見たりしていたわけではありません。
ところが、悲しい記憶を思い出したあとでは変化が現れました。
サイコパシー傾向が高い人ほど、悲しい顔から注意を外しやすくなり、その一方で怒った顔に注意が向きやすくなったのです。
この結果は重要なヒントになります。
たとえば普通の人なら、悲しい出来事を思い出したあとには、悲しそうな表情にもそのまま引き寄せられるかもしれません。
悲しみに浸るわけです。
ところがサイコパシー傾向の高い人では、悲しみを感じていても、その悲しみに関わる手がかりから注意をそらしやすいようです。
そして代わりに、怒りや対立を示す手がかりに目が向きやすくなる可能性があります。
研究者たちは、こうした結果は「感情が欠けている」という見方よりも、「感情の調整のしかたに偏りがある」と考えるほうが、今回の結果をうまく説明できるとしています。
サイコパシーの人は、何も感じないから冷酷なのではなく、不快な感情から無意識に距離を取り、その影響を弱めようとしている可能性があるのです。
もちろん、この研究にも限界はあります。
悲しみ誘導は実験室内の比較的軽いもので、現実の強い悲しみとは違うかもしれません。
また、使われた刺激は写真の顔であり、実際の対人場面そのものではありません。
さらに、対象は受刑中の男性に限られているため、女性や一般集団にも同じ傾向があるかは今後の研究が必要です。
それでも今回の研究は、「サイコパスは感情がない」という単純なイメージを見直すきっかけになります。
サイコパシーの人は、感情が欠如しているのではなく、悲しみのようなつらい感情に向き合う方法が独特なのかもしれません。






























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