昆虫なのに「自分で熱を作って」マイナス6度の雪原で生きるハエがいると判明
昆虫なのに「自分で熱を作って」マイナス6度の雪原で生きるハエがいると判明 / Credit: Capek et al., Current Biology (2026) / CC BY 4.0
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昆虫なのに「自分で熱を作って」マイナス6度の雪原で生きるハエがいると判明 (2/3)

2026.04.10 20:00:57 Friday

前ページ体液の中に「不凍液」を持っている【1つ目の防御策】

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昆虫なのに哺乳類のように「自分で熱を作る」【2つ目の防御策】

スノーフライでは極寒の地で恒温動物のように発熱するのにミトコンドリアとペルオキシソームの遺伝子が強化されているようだ
スノーフライでは極寒の地で恒温動物のように発熱するのにミトコンドリアとペルオキシソームの遺伝子が強化されているようだ / Credit: Capek et al., Current Biology (2026) / CC BY 4.0

ここからがこの研究のいちばんの驚きです。

スノーフライは、昆虫のくせに、自分の体の中で熱を作っていたのです。

私たち人間や犬猫などの哺乳類は、食べ物のエネルギーの一部をわざと熱に変えて、体温を一定に保っています。

寒い日でも体が温度を保てるのは、細胞の中にある「ミトコンドリア」という小さな発電所が、せっせと熱を作り続けてくれているからです。

ミトコンドリアは私たち動物だけでなく、植物や昆虫の細胞にも入っている共通装備ですが、哺乳類ではエネルギーの一部をあえて熱として逃がし、体を温める仕組みが発達しています。

ハチやガが飛ぶ前に筋肉をブルブル震わせて体を温めることはありますが、これはあくまで一時的な運動で、哺乳類のような細胞レベルの発熱装置ではない、と長年考えられてきました。

しかし研究チームがスノーフライの胸部に極細の温度計を刺し込んで内部温度を測ったところ、外気温が下がり始めると、彼らの体内温度は対照のコオロギより最大で1度ほど高い状態を数分間キープできることがはっきり確認されたのです。

比較のために同じ実験台に乗せた同サイズのコオロギには、この現象は見られませんでした。

さらに決定的だったのは、あらかじめ殺しておいたスノーフライで同じ実験を行うと、この温度差はまったく現れなかったことです。

つまり「体の作りのせいで偶然熱が逃げにくい」のではなく、生きている間だけ働いている能動的な仕組みが熱を生み出しているのは確実というわけです。

しかも観察中、スノーフライはいっさいブルブル震えていませんでした。

運動で熱を作っているのではなかったのです。

そもそも彼らには翅がなく、震えの元となる飛翔筋すら退化しています。

そこで遺伝子を詳しく調べたところ、興味深い事実が浮かび上がりました。

スノーフライでは、ミトコンドリアに加えてペルオキシソームに関わる遺伝子ファミリーがそろって増えていたのです。

ペルオキシソームというのは、細胞の中に浮かんでいる小さな袋状の器官で、いわばミトコンドリアの相棒となる下処理工場のようなものです。

食べ物の中の脂肪は、そのままでは大きすぎてミトコンドリアでは燃やしにくいので、ペルオキシソームがまず長い脂肪を刻んで小さなパーツに加工し、それをミトコンドリアに渡して最終的にエネルギーや熱に変えてもらい、ついでに、燃焼の過程で出てくる有害な副産物を処理する解毒所の役割も兼ねている可能性があるわけです。

さらにスノーフライではこの下処理工場と発電所、両方の能力の両者を連携させる調整役のタンパク質まで増えていることが示唆されました。

これらが正しければ、脂肪をたくさん刻んで効率よく燃やし、その燃焼のエネルギーを意図的に熱として放出する──体の設計図のレベルで、まさに「熱を作る専門部署」を丸ごと拡張していたことになります。

つまり体の設計図のレベルで、熱を生みやすい仕組みが強化されていたのかもしれません。

次ページ寒さの「痛み」を感じる感覚そのものが鈍い【3つ目の防御策】

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