「ベッド内でヘタレな男」のほうが、相手を満足させていた

男女でどのような違いがあったのか?
まず女性はパートナーの同意をやや過大評価し「相手は自分が思っている以上に乗り気だったはず」と見なしがちだったのです。
研究者たちはこの「女性が相手の意欲を過大評価する」という点について2つの可能性を提示しています。
1つ目は「男性はいつもその気だ」という思い込みです。
社会には「男性は性的に積極的で、常にセックスを望んでおり、めったに断らない」という根強い思い込みがあります。
著者らはこうした思い込みが女性の認知に影響を及ぼし、パートナーの同意を自動的に高めに見積もる方向に働くのではないかと論じています。
論文の序盤でも、先行研究を引用して、恋愛関係にある女性は男性パートナーの性的アプローチを過大評価する傾向がすでに報告されていたことに触れています。
今回の結果はこの先行知見と一致するものだった、という位置づけです。 2つ目は「拒否されたくない」「関係を壊したくない」という動機です。
著者らは、女性がパートナーの同意を高めに読み取る背景には、性的な拒否を避け、関係の安定を保ちたいという無意識の動機が関わっている可能性があると述べています。
「相手はその気だ」と認知しておけば、自分から応じることへの心理的ハードルが下がり、関係の衝突も避けやすくなる、という構造です。
一方で男性は、日記調査ではパートナーの同意をやや過小評価する傾向を示して「相手はそこまで乗り気じゃなかったかもしれない」と控えめに見積もる傾向がありました。
著者らの見解や先行研究などを参考にすると、その理由も見えてきます。
ひとつは、セックスの最中における社会的なプレッシャーです。
「男性は性的に積極的であるべきだ」というスクリプトが根強く存在する中で、男性は「自分は相手の気持ちを都合よく読んでいるのではないか」という一種の警戒心を持ちやすく、結果的に控えめに見積もる方向にバイアスがかかるのではないか、という仮説です。
もうひとつは、もう少し広い視点の話になります。
そもそも、相手の気持ちを高めに見積もる方向の勘違いは、男性にとって日常的に大きなリスクを伴います。
セックスに至るまでの場面でも、最中の場面でも、「相手はOKだろう」と先走ってしまうと、周囲との関係や信頼を大きく損ない、現代の社会規範のもとでは最悪の場合「社会的な死」に近いダメージにもつながりかねません。
そういう日常的なリスク感覚が下地になって、セックス中の感覚を読むときも、男性の脳は無意識のうちに「控えめに見積もる」ほうへ傾くのかもしれない、という考え方です。
ですが最も面白いのはここからです。
「男性が相手の意欲を過小評価」するとき、つまり女性の乗り気をやや低めに見積もっていても、男性自身の満足度が下がるわけではありませんでした。
それどころか、このときパートナーである女性の性的満足度がむしろ高くなっていたのです。
研究者たちはこのメカニズムをこう推測しています。
相手の意欲をやや低めに見積もっている男性は、「相手はそこまで乗り気じゃないかもしれない」と考えるぶん、より丁寧に接し、相手の境界線を尊重し、親密さを築く努力をする。
この慎重さが安心感と信頼感を生み、結果として満足度を高めているのではないか、と。 通常、パートナーに対する読み間違えは、相手の心証を悪くします。
しかし性的同意においては、満足度が上昇するケースが存在したのです。 以上の結果から、恋人同士は相手の性的同意を思った以上に正確に読み取れていること、そしてわずかな”読み違い”にすら関係を潤滑にする機能が隠れているかもしれないことが見えてきました。
ただし、もちろんこの知見が「だから確認しなくていい」という話ではありません。
念のため言い添えれば、この研究は「男女共に相手の性的同意を予想以上に正確に読み取れる」とは言いますが、「自分が性行為をしたいと思えば相手も必ずそう思う」とまでは言っていません。
それは恋愛心理学というより、犯罪心理学の話でしょう。
著者たちは今後、異なる文化圏やカジュアルな関係、別の関係構造にも調査を広げる必要があると述べています。




















































