「歯周病菌を"狙い撃ち"」する新しい歯磨き粉が登場――善玉菌は減らさない
「歯周病菌を"狙い撃ち"」する新しい歯磨き粉が登場――善玉菌は減らさない / Credit: PerioTrap
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歯周病菌を「狙い撃ち」する新しい歯磨き粉が登場――善玉菌は減らさない

2026.05.05 21:30:57 Tuesday

私たちの口の中には、700種類以上の細菌がひしめき合っています。

まるで小さな都市のように、善良な住民もいれば、トラブルメーカーもいる。

そんな「口内タウン」で、これまでの強い殺菌タイプの歯磨き粉やマウスウォッシュは、問題を解決するために街ごと焼き払うような方法を取ってきました。

悪い菌を殺すために、良い菌まで道連れにしていたのです。

しかしドイツのフラウンホーファー研究所(FhG)が開発した新しい歯磨き粉は、まったく違うアプローチを採用しています。

歯周病菌をピンポイントで「無力化」し、善玉菌は元気に活動できる状態を保つという、いわばスナイパー型の歯磨き粉です。

この研究は2026年1月5日にフラウンホーファー協会のリサーチニュースとして発表されました。

New Toothpaste Stops Periodontal Pathogens https://www.fraunhofer.de/content/dam/zv/en/press-media/2026/januar/izi-new-toothpaste-stops-periodontal-pathogens.pdf

従来の治療は「街ごと焼き払う」方式だった

歯周病と聞くと「歯茎が腫れる病気でしょ?」と思う方も多いかもしれません。

確かにそれも正しいのですが、実は歯周病の影響は口の中だけにとどまりません。

歯周病の主犯格であるポルフィロモナス・ジンジバリスという細は、歯茎の境目にある歯垢に住みつき、そこで炎症(歯肉炎)を引き起こします。これが悪化すると慢性歯周炎となり、歯茎が後退して歯がグラグラになってしまいます。

しかし本当に怖いのはここからです。

歯周病に関わる細菌が血流に入ると、糖尿病、関節リウマチ、心血管疾患、慢性炎症性腸疾患、さらにはアルツハイマー病にまで関与する可能性が指摘されているのです。

たかが歯周病、されど歯周病。口の中のトラブルが、全身の健康を脅かすリスク要因になりうるわけです。

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ポルフィロモナス・ジンジバリスが優勢になり、口の中のバランスが崩れた状態を示した模式図です。歯茎が下がり、炎症で赤く腫れているのが見て取れます。茶色や黄色の塊として描かれているのが、歯と歯茎の境目に溜まった歯垢。歯周病はまさにこの場所から、静かに、しかし確実に進行していきます。Credit: PerioTrap

では、これまで私たちはどうやって歯周病と戦ってきたのでしょうか。

代表的なのは、アルコールベースのマウスウォッシュや、歯科医院で使われるクロルヘキシジンという殺菌剤です。これらは確かに歯周病菌を殺してくれます。

しかし問題は、善玉菌まで巻き込んで減らしてしまうことです。

ここで厄介なことが起こります。殺菌後、口の中の細菌たちが「よーいドン」で再び増え始めるのですが、この競争で有利なのは実は悪玉菌のほうなのです。

なぜなら、ポルフィロモナス・ジンジバリスのような病原菌は、炎症を起こした歯茎の組織が大好物。すでにダメージを受けた環境では、悪玉菌のほうがスタートダッシュを決めやすいのです。

一方、善玉菌は増殖がゆっくり。結果として、治療後にむしろ悪玉菌が優勢になる「ディスバイオシス(細菌叢の不均衡)」という状態に陥り、歯周病が再発してしまうことがあります。

せっかく治療したのに元の木阿弥……というわけです。

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