乾いた荒野のハンターではなく、水辺で魚を狙う恐竜だった?
今回の発見で特に興味深いのは、新種がどのような場所で、どのように暮らしていたのかという点です。
現在の南パタゴニアは寒く、比較的乾燥した印象の強い地域です。
しかし約7000万年前、この場所は今とはかなり違っていました。
古代の土壌や植物化石の分析から、当時の環境は温暖で湿潤だったと考えられています。
周囲には蛇行する川や小川、季節的にできる池があり、スイレンのような水生植物、魚、昆虫、さまざまな軟体動物が暮らしていました。
その水辺の世界に、新種もいたのです。
チームが注目したのは、新種の頸椎(けいつい)の構造です。
この首の骨には、筋肉の付着や首の血管を保護するための特殊な構造がありました。
こうした特徴は、現代のサギのように複雑な首の動きを行う鳥類で重要になります。
サギは水辺でじっと獲物を待ち、魚が近づくと、長い首をすばやく伸ばして捕らえます。
新種もまったく同じ行動をしていたとまでは言えませんが、首の構造や化石が見つかった環境を考えると、水辺で魚を捕る生活に適応していた可能性があります。
実際、新種の化石は魚類化石とともに見つかっており、ウネンラギア類が魚食性だったという見方を補強しています。
さらに、このグループには、細長い吻部(口先)、多数の歯、長く柔軟な首など、魚を捕るのに向いていたと考えられる特徴が知られています。
もちろん、彼らが魚だけを食べていたと断定することはできません。
同じ生態系には、カエル、トカゲ、カメ、哺乳類なども生息していたため、そうした小動物を捕食していた可能性もあります。
また、新種は常に捕食する側だったわけでもなさそうです。
同じ地域には、全長10メートルを超える大型肉食恐竜(Maip macrothorax)も暮らしていました。
新種は水辺で小さな獲物を狙う一方で、より大きな捕食者に狙われる存在でもあったかもしれません。
新種カンク・アウストラリスの復元アニメーションがこちら。試聴の際は、音量にご注意ください。
今回の発見は、南パタゴニアにおけるウネンラギア類の分布の空白を埋めるものでもあります。
これまで北パタゴニアでは複数の種が知られていましたが、南パタゴニアでは種レベルで同定できる化石が乏しい状態でした。
新種は、北パタゴニア、南パタゴニア、さらに南極の記録をつなぎ、このグループが後期白亜紀の南半球に広く分布していたことを示唆しています。
ラプトル型恐竜というと、地上を駆ける俊敏な肉食恐竜というイメージが先に立ちます。
しかし新種は、その仲間たちが水辺にも進出し、サギのような狩りのスタイルを身につけていた可能性を教えてくれます。
7000万年前のパタゴニアの川辺では、鋭い鉤爪を持つ恐竜が水面を見つめ、魚の動きを待っていたのかもしれません。



















































