「役に立った」と感じても、6割以上は誰にも話していない
興味深いのは、AIチャットボットを利用した若者の多くが、その体験を肯定的に受け止めていたことです。
利用者の91.7%は、AIチャットボットから得た助言を「非常に役立った」または「ある程度役立った」と評価していました。
誰にも言えない悩みを、いつでも、すぐに、否定されずに書き込める。
この手軽さは、若者にとって大きな安心感につながっているのかもしれません。
しかし、ここには重要な注意点があります。
この研究で分かったのは、あくまで若者自身が「役に立った」と感じたということです。
AIチャットボットの助言が、医学的・心理学的に正確だったか、安全だったかを検証したわけではありません。
研究者たちは、チャットボットが相手に過度に同調したり、褒めたりする傾向によって、「助けられた」と感じやすくなっている可能性にも注意を促しています。
そして、もう一つ大きな問題があります。
AIチャットボットに心の悩みを相談した若者のうち、63.3%は、そのことを誰にも話していませんでした。
相談した相手としては、友人が28.0%、親・教師・医師などの信頼できる大人が16.4%でした。
つまり、多くの若者はAIに相談していながら、その事実を周囲の人間には共有していなかったのです。
この「隠れた利用」は、AIチャットボットをめぐる問題を難しくしています。
AIの利用そのものを単純に否定すれば、若者はさらに相談を隠すかもしれません。
しかし、AIの助言を完全に信じ込んでしまえば、深刻な不安や抑うつ、自傷のリスクがある場合に、専門的な支援へつながる機会を逃す可能性もあります。
また今回の研究では、女性や年齢が高めの10代、そして過去6カ月以内にメンタルヘルスについて医師と話したことがある若者ほど、AIチャットボットを利用する傾向が高いことも示されました。
これは、AI相談が「医療につながっていない人だけの代替手段」ではないことを示しています。
すでに医師に相談している若者も、日常の不安や気持ちの整理のためにAIを併用している可能性があるのです。
研究者たちは、AIチャットボットがすでに若者のメンタルヘルス情報環境の一部になっていると指摘しています。
だからこそ、保護者や医師、教育関係者は、若者に対して「AIなんて使うな」と頭ごなしに否定するのではなく、どのように使っているのかを自然に話し合う必要があります。
AIは、つらい気持ちを言葉にするきっかけにはなるかもしれません。
しかし、深刻な心の不調を診断したり、治療したりする専門家ではありません。
重要なのは、AIを「秘密の相談相手」に閉じ込めないことです。
若者がAIに打ち明けた言葉を、必要なときには人間の支援につなげられるようにする。
それがこれからのメンタルヘルス支援に求められる新しい課題なのかもしれません。


























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