18世紀の「矯正器具」はどんなものだったのか
マリー・アントワネットが歯列矯正を受けていたという話は、歴史上の逸話として語られることがあります。
しかし、この話を裏付ける決定的な一次資料は確認されておらず、断定はできません。
それでも、この逸話がまったく不自然ではない理由があります。
それは、彼女がフランスへ嫁ぐ時代には、すでに歯並びを整える技術が存在していたからです。
近代歯科医学の父とも呼ばれるピエール・フォシャールは、1728年に『外科歯科医』を出版しました。
この本には、虫歯の治療や義歯だけでなく、歯並びを整える方法も含まれていました。

その代表的な器具が「バンドー」です。
バンドーは、馬蹄(ばてい)形の金属を歯列に当て、歯を少しずつ動かそうとするものでした。
現在の矯正器具も、歯に一定の力をかけて位置を変えていくという点では同じ原理です。
ただし、現代の矯正装置ができるだけ効率的で痛みを抑えるよう設計されているのに対し、18世紀の器具はずっと原始的でした。
絹糸や細い金属線で歯を器具に結びつけ、手作業で調整していたとされます。
麻酔も現在のようには使えないため、もしマリー・アントワネットが本当にこうした治療を受けていたなら、それはかなりつらい経験だったはずです。
また、当時のフランスでは、歯の美しさが宮廷人の印象を左右する要素になりつつありました。
つまり、フランス王太子妃として迎えられる少女の外見を整える過程で、歯にも手が加えられた可能性はあります。
ただし、ここで重要なのは「可能性がある」という点です。
マリー・アントワネットが歯列矯正を受けていたという話は、日本の歯科コラムなどでも紹介されていますが、一次資料に基づく確定情報として扱うには注意が必要です。
そのため、この話は「マリー・アントワネットが歯列矯正をしていた」と断言できるものではなく、「歯列矯正を受けていた可能性もゼロではない」と表現するのが適切です。
豪華なドレスや髪型の陰で、未来の王妃は歯並びまでフランス風に整えられていたのかもしれません。
ヴェルサイユの華やかさは、実は口元の痛みの上にも作られていた可能性があるのです。























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