すべての肌色グループで精度基準を満たす一方、測定成功率には差もある
この研究で特に重要なのは、現実のスマートフォン使用に近い環境でも検証されたことです。
日常生活では、暗い部屋や屋外の強い光、歩行中の手ぶれ、斜めの顔、髪やマスクによる顔の隠れなど、測定を邪魔する条件がいくつもあります。
それでもPHRMは、日常環境での心拍数測定において、参加者レベルで平均絶対パーセント誤差(予測値が実際の値からどれだけ外れているかを表した指標)6.09%という結果を出しました。
これは、事前に定められた10%未満という精度目標を満たすものです。
さらに研究チームは、肌色ごとの性能差にも注目しました。
光を使った生体計測では、暗い肌色で精度が落ちやすいことが以前から問題になっています。
メラニンが光を吸収し、皮膚の奥にある血管由来の信号を弱めやすいからです。
そこで研究チームは、肌色を明るいグループ、中間のグループ、暗いグループに分け、それぞれで精度を確認しました。
自由生活環境での参加者レベルの平均絶対パーセント誤差は、明るい肌色グループで5.04%、中間の肌色グループで5.12%、暗い肌色グループで7.84%でした。
いずれも10%未満であり、PHRMはすべての肌色グループで精度基準を満たしたことになります。
ただし、肌色による差が完全になくなったわけではありません。
自由生活環境では、有効な心拍測定を得られた割合が、明るい肌色グループで58%、中間の肌色グループで45%、暗い肌色グループで25%でした。
つまり、暗い肌色のグループでは、採用された測定値の精度は基準を満たした一方で、そもそも有効な測定として使える動画の割合が低かったのです。
一方、日ごとの安静時心拍数の推定では、PHRMは一日の中で得られた複数の測定を統合することで、ウェアラブル心拍トラッカーに近い値を出しました。
さらに、PHRMで推定された安静時心拍数は、体格指数(Body Mass Index/BMI)や、心肺体力の目安となる最大酸素摂取量(VO2 max)とも関連していました。
体格指数が高い人ほど安静時心拍数が高く、最大酸素摂取量が高い人ほど安静時心拍数が低い傾向が見られたのです。
これは、PHRMが単なる映像上のノイズではなく、実際の生理的な情報を反映している可能性を補強します。
ちなみに、この技術はまだ医療診断ツールとは言えません。
今回のシステムが推定したのは、心拍数や日ごとの安静時心拍数です。
スマートフォンだけで心臓病を診断できるわけではなく、心房細動や心不全などの臨床用途に使うには追加研究が必要です。
それでも今回の研究が示したのは、スマートフォンが単なる連絡や娯楽の道具ではなく、日常の中で心臓の状態を見守るセンサーになり得るという可能性です。
健康モニタリングは特別な機器を持つ人だけのものではなくなるかもしれません。

























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