群れの中で試された「不公平への反応」
人間社会では、公平さは重要な感覚です。
同じ作業をしたのに、自分だけ報酬が少なければ、多くの人は不満を抱くでしょう。
こうした「自分と相手の取り分の差」への反応は、不平等嫌悪(inequality aversion)と呼ばれます。
動物を対象にした研究は過去にも行われてきましたが、それらの多くは、2個体だけを向かい合わせる二者実験でした。
二者実験は条件をそろえやすい一方で、動物たちが本来暮らす群れの複雑な社会関係を反映しにくいという限界があります。
そこで研究チームは、群れ全体がその場にいる状態で、参加したい個体が自由に参加できる「物と報酬を交換する実験」を行いました。
対象となったのは、アメリカ・テキサス州のNational Center for Chimpanzee Careで暮らすチンパンジーたちで、最終的な解析には27個体が含まれました。
実験では、チンパンジーがトークンを実験者に渡すと、食べ物を受け取れます。
報酬には、低価値・中価値・高価値の3段階の食べ物が用意されました。
低価値にはセロリやニンジン、中価値にはピーナッツ、オレンジ、リンゴ、高価値にはブドウやバナナが、群れごとの好みに合わせて使われました。
実験条件には、全員が同じ報酬を受け取る公平条件、1個体だけが他の個体より低い、または高い報酬を受け取る不公平条件がありました。
さらに、より良い食べ物を見せたあと、実際にはそれより価値の低い食べ物を渡すコントラスト条件も設けられました。
これは、チンパンジーが本当に他個体との比較に反応しているのか、それとも単に「良い食べ物を見せられたのにもらえなかった」ことに反応しているのかを切り分けるためです。
その結果、チンパンジーは自分だけ低価値の食べ物を受け取り、他の個体がより良い食べ物を受け取ると、報酬を拒否しやすくなることが分かりました。
拒否行動には、食べ物を受け取らない、落とす、捨てる、メッシュ越しに押し返すといった行動が含まれます。
では、この反応はどんな条件で強まり、どんな条件では弱まったのでしょうか。より詳細な結果は次項で見ていきます。































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