報酬の価値と「親しい仲間」が反応を左右した
今回の研究で重要なのは、チンパンジーがどんな不公平にも同じように反応したわけではない点です。
最もはっきりした反応が見られたのは、自分が低価値の食べ物を受け取り、他の個体が高価値の食べ物を受け取る場合でした。
たとえば、自分はセロリやニンジンなのに、他の個体はブドウやバナナをもらっているような状況です。
このような大きな報酬差があると、チンパンジーは自分の報酬を拒否しやすくなりました。
一方で、自分が中価値の食べ物を受け取っている場合には、他の個体が高価値の食べ物を受け取っていても、拒否反応はほとんど見られませんでした。
つまり、チンパンジーは「相手の方が少しでも良いものをもらったら嫌がる」わけではありません。
自分が受け取る報酬が十分に価値あるものなら、相手がさらに良いものをもらっていても、それを受け入れる傾向があったのです。
また、自分だけが他の個体より良い報酬を受け取る「有利な不公平」では、報酬を拒否する行動はほとんど見られませんでした。
このため、本研究が示しているのは、主に「自分が損をする不公平」への反応です。
さらに意外だったのが、社会的関係の影響です。
研究チームは、接触、毛づくろい、近くにいる頻度などをもとに、チンパンジー同士の親しさを評価しました。
すると、特に自分が低価値報酬を受け取り、他の個体が高価値報酬を受け取る場面では、親しい相手が近くにいるほど、報酬を拒否しやすくなっていました。
これは、人間やボノボで報告されてきた傾向とは異なります。
人間やボノボでは、親しい相手との不公平には比較的寛容になりやすい傾向があります。
しかし今回のチンパンジーでは、むしろ親しい仲間が近くにいると、不公平への反応が強まっていたのです。
なぜそうなるのかは、まだはっきりしていません。
研究チームは、親しい相手には注意を向けやすいため不公平に気づきやすかった可能性や、親しい相手が重要な協力相手でもあるため、その相手との報酬差をより強く気にした可能性を挙げています。
ただし、この研究は「チンパンジーに人間と同じ正義感がある」と示したものではありません。
測定されたのは、あくまで食べ物を受け取らない、捨てる、押し返すといった報酬拒否の行動です。
それでも今回の結果は、チンパンジーの反応が単なる損得だけでは説明できないことを示しています。
チンパンジーの反応は、報酬の差だけでなく、その場にいる相手との関係にも左右されるのです。































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