「泣きながら食べる」ことで塩を外へ出している
オサガメには、海水をできるだけ飲み込まないための工夫があります。
その一つが、特殊な食道です。
オサガメの食道の内側には、角質化した円錐状の「トゲ」のような構造が並んでいます。
これらは胃の方向を向いており、食べ物が逆流したり、水と一緒に外へ逃げたりしにくいように働きます。
たとえばクラゲを飲み込むと、発達した食道の筋肉が収縮し、入り込んだ余分な海水を押し出します。
一方で、トゲが食べ物を押さえるため、海水を体外に排出する一方で、栄養になる部分は体内へ運ばれます。
とはいえ、この仕組みだけですべての塩を防げるわけではありません。
そこで重要になるのが、目の後ろにある「塩類腺」です。
ウミガメの腎臓は、体に入った大量の塩を十分に処理できません。
その代わり、涙腺が特殊化した塩類腺が、血液中の余分な塩分を取り除き、涙として外へ排出します。
この涙はただの水ではありません。
海水の約2倍もの濃さを持つ、粘り気のある塩辛い液体です。
オサガメの場合、塩で体を壊さずにクラゲを食べ続けるためには、1時間に約8リットルもの涙を流す必要があるとされています。
人間の目には、オサガメが泣きながら食べているように見えます。
しかしそれは悲しみではなく、海で生きるための排塩システムなのです。
水中では、この涙はすぐに海水に薄まってしまうため、ほとんど見えません。
オサガメの涙は、感情のしるしではありません。
それは、塩辛い海の中で低塩分の体を守るために進化した、命をつなぐための液体です。
海は生命を育む場所である一方で、そこに暮らす動物に常に塩分との戦いを強いています。
オサガメが流す涙は、その静かな戦いの跡なのです。




























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