2種の人類が共有していた「ある価値観」
さらに注目すべきなのは、化石だけではありません。
洞窟からは、人類の生活を示す大量の遺物も見つかりました。
チームは、1万9252点の石器、2万4236点の食糧となった動物の化石、さらに59点の食用には適さない貝類の殻を確認しています。
これらの遺物は、当時の人々が何を作り、何を食べ、どのような物を洞窟に持ち込んでいたのかを教えてくれます。
そして驚くべきことに、ウチャーズリII洞窟では、ネアンデルタール人とサピエンスの間で文化的な連続性が見られました。
両者は、同じような石材を使い、同じような方法で石器を作っていました。
また、同じ動物を狩り、その動物の同じ部位を洞窟に持ち帰って食べていたのです。
ここまでは、同じ環境に暮らしていれば、似た行動になることも考えられます。
同じ土地に住み、同じ資源を使えば、似た道具や食料調達の方法が生まれるかもしれません。
しかし、チームが特に注目したのは、実用性のない自然物の収集行動でした。
それが「食用に適さない小さな貝殻」です。

ウチャーズリII洞窟では、ネアンデルタール人の層からも、サピエンスの層からも、「アフリカタモト」という貝の殻が見つかりました。
アフリカタモトは地中海沿岸に生息する小型の貝で、食料には向いていません。
道具として便利だったわけでもありません。
つまり、生きるために必ず必要なものではないのです。
それにもかかわらず、ネアンデルタール人もサピエンスも、この貝殻を選んで洞窟へ持ち帰っていました。
しかも洞窟の周辺では、他の貝や自然物も手に入ったと考えられます。
その中で、なぜか両者は同じ種類の貝殻を集めていたのです。
これは、単なる偶然とは考えにくい行動です。
チームは、両者が同じ貝殻に対して、何らかの価値を見いだしていた可能性があると考えています。
言い換えれば、ネアンデルタール人とサピエンスは、
「役に立たないが、美しいもの」
「食べられないが、持ち帰りたくなるもの」
に対する感覚を共有していたのかもしれません。


































