翼竜を食べた魚竜も「巨大首長竜」の食事になった
ところが、魚竜の骨格には別の驚くべき痕跡がありました。
複数の脊椎骨には深く大きな噛み跡が残り、骨は押し潰されるように割れ、肋骨の一部も失われていました。
中には、折れた肋骨が脊椎骨の破断面に強く押しつけられた状態のものもありました。
これは死後に地層の圧力で偶然壊れたのではなく、強力な顎で魚竜の骨格を噛み砕いたことを示すと考えられます。
チームが有力な“犯人”として挙げたのが、クロノサウルス・クイーンズランディクス(Kronosaurus queenslandicus)です。
クロノサウルスは首長竜類に含まれますが、長い首をもつ典型的な首長竜とは異なり、大きな頭と短い首をもつ「プリオサウルス類」の巨大捕食者でした。

当時のエロマンガ海で、これほど大きく深い傷を残せる太い歯をもつ海生爬虫類として、クロノサウルスが最も妥当だと判断されたのです。
そのため、この化石には「翼竜が魚竜に食べられ、その魚竜が巨大プリオサウルス類に部分的に食べられた」という、3段階の食物連鎖が刻まれていたことになります。
ただし、クロノサウルスの歯そのものが魚竜の骨に残っていたわけではありません。
また、クロノサウルスが生きた魚竜を襲ったのか、それとも死骸をあさったのかも区別できないため、「クロノサウルスが魚竜を殺した」とまでは断定できません。
論文が示しているのは、魚竜の骨格が大型捕食者によって強く噛み砕かれ、少なくとも一部を食べられた可能性が高いということです。
それでも、化石から過去の動物の行動を直接読み取れる例は非常に珍しいものです。
この標本は、古代の海が単純な「食う側と食われる側」に分かれていたのではなく、大型のハンターでさえ、さらに強大な捕食者の食事になり得たことを鮮明に伝えています。





























