「荒らしだ」という判断が報復の引き金になる
まず、踊ってもポイントが得られない場合、荒らしだという評価は7点満点中平均4.69でした。
一方、10ポイントを得られる場合は平均4.03まで下がっています。
ポイントという明確な目的があれば、「相手を嫌な気分にさせるために踊った」という解釈以外にも、「ポイントのために踊った」という理由が成り立つからだと考えられます。
また、倒れた敵の上で踊った場合は平均4.12だったのに対し、味方の上で踊った場合は4.60でした。
味方には本来、協力的な行動が期待されるため、その期待に反する行動ほど「わざと嫌がらせをしている」と受け取られやすかったと考えられます。
さらにコミュニティの評判も影響しました。
荒らしが多いコミュニティだと知らされた場合は平均4.63だったのに対し、荒らしが少ないと知らされた場合は4.08でした。
つまり「ここには荒らしが多い」という前提を持っているだけでも、曖昧な行動の中に悪意を見つけやすくなる可能性があります。
しかも、この3つの手がかりは特定の組み合わせだけで強く働いたのではなく、それぞれが独立して荒らしという判断を強めていました。
言い換えるなら、「ポイントがない」「対象が味方」「荒らしの多い場所」というサインが重なるほど、同じ行動でも悪意あるものに見えやすくなったのです。
そして統計分析では、この「荒らしだ」という認識が、相手に嫌がらせをやり返したいという気持ちにつながる仲立ちをしていました。
つまり、周囲の手がかりを見て「この人は自分たちを荒らしている」と判断すると、「ならばこちらもやり返してよい」という心理が生まれやすくなるわけです。
研究者らは、こうした報復が別のプレイヤーから新たな荒らしと受け取られるなら、さらに報復を呼び、嫌がらせが連鎖していく可能性があると考えています。
ただし今回の研究が、実際の荒らしのうち何割がこうした誤解から生じているのかを測定したわけではありません。
また、参加者は録画映像を見ただけで、実際にゲームをプレイしたわけではなく、測定されたのも本当に報復した行動ではなく「報復したい」という意図でした。
音声やテキストによる会話も排除されているため、今後は実際の試合中にも同じ心理が働くのか、さらにVRやライブ配信など別のオンライン空間でも同様の誤解が起きるのかを調べる必要があります。
それでも今回の研究は、オンラインの荒らし問題を考えるうえで、「誰が最初に悪意を持っていたのか」だけでなく、「なぜ相手の行動を悪意だと受け取ったのか」に目を向ける重要性を示しています。
荒らしの連鎖を止めるには、悪意ある行為だけでなく、その途中で生まれる「誤解」を減らすことも重要なのかもしれません。































