200年超えは珍しくない? 数百年を生きる可能性
チームは、この長期的な成長データを使って、体が大きくなるにつれて成長速度がどの程度低下していくのかを数学モデルで推定しました。
これは、数百年生きることで知られるニシオンデンザメの寿命を推定する際に使われてきたアプローチとも似ています。
その結果、個体群によって推定値には大きな違いがあるものの、ミズウミチョウザメには200年以上生き、300年近い年齢に達する個体が存在する可能性が示されました。
これは、従来よく引用されてきた約150年という寿命を大きく上回ります。
ただし、ここで注意しなければならない点があります。
今回の研究で「300歳のミズウミチョウザメが発見された」わけではありません。
研究者らが直接測定したのは、標識を付けた魚が数十年間にどれほど成長したかです。
そこから「これほど成長が遅いなら、この大きさになるまでに何年必要なのか」をモデルによって逆算しています。
つまり300年という数字は、実際に300年間追跡した魚の年齢ではなく、長期的な実測データに基づく推定値なのです。

それでも今回の発見は、ミズウミチョウザメの保全を考えるうえで重要です。
この魚は成熟までに長い時間がかかり、繁殖頻度も低いため、一度個体数が減少すると回復には長い年月を要します。
もし成体が200年、300年という時間尺度で生きる動物なら、その生存率や漁獲の影響を評価する際にも、それだけ長い時間軸で考える必要があります。
今回の発見にたどり着けたのも、大学や州政府、先住民族のコミュニティなどが何十年にもわたり標識調査と保全活動を続けてきたからでした。
研究者のスコット・コルボーン(Scott Colborne)氏によると、一部の先住民族コミュニティでは以前から、ミズウミチョウザメは400年ほど生きる可能性があると考えられてきたといいます。
現代の長期データ解析が、そうした古くからの認識と重なる方向を示したことも興味深い点です。
ミズウミチョウザメが実際に300年近く生きることを確定するには、既知年齢の個体や別の年代推定法を用いたさらなる検証が必要です。
しかし今回の研究は、五大湖を泳ぐ巨大魚の中に、人間の歴史を数世紀にわたって生き抜いてきた個体が存在する可能性を示しました。
湖の「ヌシ」という言葉が、これほど似合う魚も珍しいのかもしれません。

































