押し込めた感情は「消えた」のではない
では、感じたくない感情を無視し続ければ、そのうち消えてしまうのでしょうか。
心理学者は、そうではないと説明します。
感情は意識しないようにしたからといって完全になくなるわけではなく、本人が気づかないところに蓄積していくという考え方です。
忙しくしている間はその存在に気づかなくても、静かな時間になると再び表面へ浮かび上がり、理由のはっきりしない落ち着かなさや不満として感じられることがあります。
そのため、心理学者は、さらに忙しさを増やして逃げるのではなく、自分の感情に少しずつ注意を向ける練習を提案しています。
方法はとても単純です。
数分間目を閉じ、外から入ってくる刺激を減らしたうえで、「私は今、何を感じているのだろう?」と自分に問いかけます。
そして「不安」「寂しい」「腹が立つ」「退屈」「安心している」など、できるだけ具体的な言葉を当てはめてみます。
重要なのは、その感情が正しいか間違っているかを判断することではありません。
まずは「自分の中に今こういう感情がある」と認識することです。
これが難しい人の場合、最初から感情を特定しようとせず、1分程度静かに座って、自分の内側に意識を向けるところから始めてもよいとされています。
これまで長い間、自分の感情に意識を向ける習慣がなかった人にとって、何もせずに自分と一緒にいる時間はむしろ難しいものだからです。
ただし、ここで紹介されている内容は、特定の実験によって「忙しさの原因が感情的ネグレクトだ」と証明した研究結果ではありません。
これは心理療法家の臨床経験をもとにした解説であり、忙しさや落ち着かなさには仕事環境、性格、習慣、ストレスなど、さまざまな理由が考えられます。
それでも、「なぜ自分は休んでいると落ち着かないのだろう」と感じたとき、単に「自分は忙しい人間だから」と片づけるのではなく、その瞬間にどんな感情を避けようとしているのかを考えてみることには意味があるかもしれません。
私たちは「休むこと」が苦手なのではなく、休んだときに現れる自分自身と向き合うことを避けている場合があります。
もし予定を詰め込み続けても、なぜか落ち着かない状態が続いているなら、ときには何もせず、「今の自分は何を感じているのか」と問いかけてみるのもよいでしょう。
忙しさを止めた先で待っているものは、避けるべき厄介な感情ではなく、これまで十分に耳を傾けてこなかった自分自身なのかもしれません。
































