40年前の冷凍標本から「死んだDNA」を再び働かせる
絶滅したカモノハシガエルを復活させようと始まったのが、「ラザロ・プロジェクト」です。
その最大の武器となったのが、40年以上にわたって冷凍保存されてきたカモノハシガエルの標本でした。
チームが試したのは「体細胞核移植(SCNT)」と呼ばれるクローン技術です。
これは、絶滅したカエルの体細胞からDNAの入った核を取り出し、別のカエルの核を除いた卵細胞へ移植する方法です。
チームは、遠縁のオオバードガエル(Mixophyes fasciolatus)の卵を使い、数百回にわたって核移植を試みました。
残念ながら、絶滅したカエルをそのままオタマジャクシや成体まで育てることには、まだ成功していません。
しかし、重要な前進がありました。
移植した卵の一部が分裂を始め、「胞胚」と呼ばれる非常に初期の胚の段階まで発生したのです。
しかも調査の結果、その胚には確かに絶滅したカモノハシガエルの核DNAが含まれていました。
チームはこれについて、「どうやら私たちは“死んだ”DNAを複製させることができたようです」と説明しています。
40年以上前に死んだカエルの細胞核が、別種の卵の中で再びDNAを複製し、胚発生を始めたわけです。
ただし大きな問題も残っています。
保存されているカモノハシガエルの標本は1個体だけで、しかも幼体だったため、精子や卵といった生殖細胞は残されていません。
さらに研究を難しくしているのは、冷凍細胞だけではありません。
チームが比較のために新鮮なカエルの細胞核を使って体細胞核移植(SCNT)を行った場合でさえ、当初は生存可能な個体を作ることができませんでした。
つまり、絶滅種を復活させる前に、まず「カエルで核移植を成功させる技術そのもの」を改善する必要があったのです。
そこでチームは、体細胞核移植(SCNT)の条件を見直し続け、最近ではオーストラリア産の別のカエルをクローン化し、オタマジャクシの段階まで生存させることに成功したといいます。
現在も技術の最適化が続けられており、十分な成功率が得られれば、再びカモノハシガエルの冷凍細胞を使った実験に挑戦する予定です。
絶滅種復活というと、マンモスのような大昔の動物が注目されがちです。
しかしラザロ・プロジェクトが相手にしているのは、わずか40年ほど前まで生きていたカエルです。
しかも手元には、実際の個体から保存された細胞があります。
それでも、死んだ細胞のDNAから健康な個体を作り出すことは簡単ではありません。
現在のところ復活した胃内育児ガエルはまだ1匹もいません。
それでも、かつて死んだカエルのDNAが再び複製され、胚の形成を始めたことは確かです。
もし技術的な壁を乗り越えることができれば、いつの日か再び、母親の口から小さなカエルが姿を現す光景を見ることになるのかもしれません。


































