実際の抜毛には「退屈」が関係していた
研究チームは、「その瞬間に何が一緒に起きているか」と、「ある時点の状態が次の測定時点を予測するか」を分けて分析しました。
すると、ネガティブ感情の役割には大きな違いが見えてきました。
まず同じ時点の状態を見ると、不安や怒り、悲しみなどのネガティブ感情が強いほど、「髪を抜きたい」という衝動も強くなっていました。
そして退屈や反すうが強いときにも衝動は強く、反対にポジティブな感情が強いときには衝動が弱い傾向がありました。
つまり、嫌な気分と抜毛衝動が同時に現れること自体は、今回の研究でも確認されたのです。
ところが時間の流れを加えて、「その状態が次の測定までの抜毛を予測するか」を調べると結果が変わりました。
ネガティブ感情は、その後の実際の抜毛を有意には予測しませんでした。
一方、感情や状態の中で、その後の抜毛を予測したのが「退屈」です。
さらに「疲労」は実際の抜毛ではなく、次の測定時点で「髪を抜きたい」という衝動が強くなることを予測していました。
この結果は、抜毛症を単に「つらい感情を鎮める行動」と考えるだけでは不十分な可能性を示しています。
退屈は不快な気分である一方、周囲や自分の内側から得られる刺激が乏しい状態とも関係します。
研究者らはそのため、髪を抜くという反復行動には、強すぎる感情を抑えるだけでなく、刺激が乏しいときに自分の刺激レベルを調整する働きが関係している可能性もあると考えています。
もちろん、感情調整という従来の説明が完全に否定されたわけではありません。
実際、ネガティブ感情はその瞬間の抜毛衝動とは関連しており、人や状況によっては感情を和らげるために抜毛するケースもあると考えられます。
ただし今回の研究では、質問の間隔が最大4時間あったため、その間に起きた短時間の感情変化を捉えられていない可能性があります。
また、一人でいたのか、仕事中だったのかといった周囲の状況も記録されておらず、将来方向の関連で確認された効果も全体として小さいものでした。
それでも今回の結果は、抜毛症を「ストレスへの反応」だけで説明するのではなく、退屈や疲労、抜毛衝動、周囲から受ける刺激などを含めた、より複雑な仕組みとして捉える必要があることを示しています。


































