親が使いがちな9つの言葉とその言い換え
ウェッブ氏が示した9つの例を、なぜその言い換えが重要なのかと合わせて見ていきましょう。
1つ目は、「泣くのをやめなさい」です。
これを、「どうして泣いているの?」と言い換えます。
親としては、泣いている子どもを早く落ち着かせたいだけかもしれません。
しかし「泣くのをやめなさい」とだけ言われると、子どもには「悲しんだり泣いたりすること自体がよくない」というメッセージとして伝わることがあります。
一方、「どうして泣いているの?」と尋ねれば、注目する対象が「泣いているという行動」から「なぜ悲しいのか」へ移ります。
子ども自身が、自分はいま何を感じているのかを考えるきっかけにもなります。
2つ目は、かんしゃくを起こしている子どもへの、「かんしゃくが収まったら教えて」です。
代わりに、「大丈夫。全部出していいよ。それから話そう」と伝えます。
前者は、親としては「落ち着いてから話そう」という意味で使っているのかもしれません。
しかし子どもには、「その気持ちは自分一人で何とかして」と突き放されたように伝わる可能性があります。
それに対して後者は、感情が出ていること自体は否定せず、そのあとで一緒に話すことを伝えています。
感情を無理に消させるのではなく、「落ち着いたら一緒に考えよう」という姿勢を示しているのです。
3つ目は、「もういい加減にして!これ以上付き合えない」です。
これを、「二人とも落ち着けるように少し休もう」と言い換えます。
子どもが激しく怒っていると、対応する親の側もイライラしてしまいます。
その状態でお互いに言葉をぶつけ続ければ、問題を考えるどころではなくなるでしょう。
そこで、子どもだけを責めるのではなく、親も含めていったんその場から距離を置き、落ち着く時間を作ります。
ここでは親自身も感情を持つ人間であり、それを調整する必要があることを子どもに示すことにもなります。
4つ目は、「その態度を直しなさい」です。
これを、「怒っているか、何かつらそうに聞こえるけど、そうなの?」と言い換えます。
ぶっきらぼうな返事や反抗的な口調を見ると、親はまず態度を注意したくなります。
しかし「態度が悪い」とだけ言われても、子ども自身がなぜそんな態度になっているのか理解できていないことがあります。
そこで、まず「怒っているの?」「何か嫌なことがあったの?」と感情の方へ目を向けます。
もちろん、怒っているから失礼な態度を取っていいという意味ではありません。
まず感情を確認し、そのうえで「では、どう伝えればいいのか」を考えることが重要なのです。
5つ目は、「行動する前に考えなさい!」です。
代わりに、「どうしてこうなったんだろう。一緒に考えてみよう」と伝えます。
何かに失敗した子どもに「考えてから行動しなさい」と注意するのは簡単です。
しかし、失敗が起きたあとだからこそ、「どこでうまくいかなかったのか」「次はどうすればいいのか」を振り返る材料があります。
ただ叱って終わるのではなく、一緒に振り返ることで、次に似た状況になったときの行動を考える練習に変えられます。
6つ目は、「もっと行儀よくできるまで、自分の部屋に行きなさい」です。
これを、「怒っているんだね。それは○○が原因かな?」のように言い換えます。
ここでウェッブ氏が重視しているのは、感情的になった子どもをすぐに遠ざけるのではなく、まず何を感じているのかに目を向けることです。
繰り返し「落ち着くまで一人でいなさい」と対応されると、子どもには「怒りや悲しみは一人で処理しなければならない」というメッセージとして伝わる可能性があります。
そこでまず、「なぜ怒っているのか」を一緒に探ります。
自分の感情が何から生じたのかを理解することも、自分の気持ちを扱うための第一歩になるからです。
7つ目は、たとえば店に入る直前まで泣いている子どもへの、「もう泣き止んで。お店に入るよ」です。
これを、「私を見て。深呼吸して、1から5まで数えてみよう」と言い換えます。
この例が他と少し違うのは、感情を認めるだけではなく、実際に落ち着くための行動まで示していることです。
子どもは強い感情を抱くことがあっても、それをどう落ち着かせればいいのかを最初から知っているわけではありません。
そこで大人と一緒に深呼吸したり、ゆっくり数を数えたりすることで、「気持ちが高ぶったときには、こうやって落ち着く」という方法を経験させます。
8つ目は、「緊張することなんてないよ」です。
これを、「誰だって緊張するよ。大丈夫。話してみて」と言い換えます。
これは親が良かれと思って言いやすい言葉でしょう。
子どもを安心させたくて、「怖くないよ」「心配する必要なんてないよ」と励ますことがあります。
しかし本人が実際に怖かったり緊張したりしている以上、「怖くない」と言われても、その感情がなくなるわけではありません。
むしろ「自分は怖いのに、怖くないと言われた」と感じることもあります。
そこでまず、「緊張することはある」「そう感じても大丈夫」と感情そのものを認めます。
そのうえで何が不安なのかを話し、次にどうすればいいのかを一緒に考えるのです。
そして9つ目は、「そんな口の利き方をしないで」です。
これを、「もう一度、もう少し優しい言い方で言ってみて」と言い換えます。
ここでは「怒りを感じるな」と求めているわけではありません。
怒っていたとしても、相手を傷つけない方法で伝えられることを教えています。
前者が「その言い方はダメ」と止める言葉なのに対し、後者は「では、どう言えばいいのか」を実際にやり直す機会を与えているのです。
こうして9つを並べてみると、どれにも共通する考え方があります。
それは、感情と行動を分けることです。
「怒ってはいけない」のではなく、「怒ってもいい。でも人を叩いてはいけない」。
「悲しんではいけない」のではなく、「悲しいなら、その気持ちをどう扱えばいいのか考えよう」。
子どもの感情を認めることは、子どもの要求や行動を何でも許すことではありません。
感情そのものは否定せず、その感情をどう表現し、どう行動するかについてはきちんと教える。
ウェッブ氏が9つの言い換えを通して伝えているのは、そうした子どもとの向き合い方です。
次に、子どもが泣いたり怒ったりしたとき、それをただ「やめなさい」と押し込めるのではなく、「この子はいま何を感じているのだろう」と、その感情にも目を向けてみてください。































