そして結晶は光に溶けた

光を当てれば結晶の中が読み取れる。
それが分かった研究チームは、今度は光そのものを強めてみることにしました。
このとき目印になったのが、反射光に写っていたもう一つの信号です。
電子がきちんと整列しているあいだだけ現れ、並びが崩れれば消えてしまう——いわば、結晶が結晶でいることの証拠となる信号でした。
この証拠を見張りながら、研究チームは光を強めていきます。
すると規則性を示す信号は少しずつ弱まり、平均4マイクロワットほどの光を当てたところで、ほとんど消えてしまいました。
整列が崩れた——つまり結晶が溶けたのです。
そもそもこの結晶は、電子を詰め込みすぎると壊れます。
今回の試料では、1平方センチあたり7000億個がその境目でした。
ところが光を注ぎ込んでいくと、この境目そのものが下がっていきました。
同じ数の電子でも、光を浴びるほど結晶ではいられなくなる、ということです。
そしてもう一つ、予想外のことが起きていました。
並びの証拠が消えていく一方で、震えを示す信号のほうは踏みとどまっていたのです。
全体としての整列は失われても、隣り合う電子同士の関係はまだ生きていた——研究チームはそう見ています。
つまり結晶は、まるごと一度に崩れたわけではありませんでした。
もっとも、なぜ光で溶けるのかは、まだ分かっていません。
光が生んだペアが電子同士の反発を和らげている可能性はありますが、目に見えるペアだけでは数が足りないのです。
電子の結晶は長らく、条件を整えたときにだけ姿を見せる「凍りついた模様」として扱われてきました。
今回明らかになったのは、その模様が震え、光に応じ、そして崩れていく、はるかに落ち着きのない相手だったということです。
磁石にも熱にも頼らないこの制御は、電子が強く結びつき合う物質を扱う新しい手法になっていくかもしれません。































