謝る、遅らせる、そして偽る

相手の一言に反応していたのは、打ち明けるかどうかという判断だけではありませんでした。
就職面接を舞台にした別の実験では、参加者が相手に返す言葉の数が調べられました。
返答の長さは全体で平均20.07語でしたが、「相手が不採用で、自分が内定を得ていた」場面でそれでも内定を明かした人は、平均31.11語と、全体平均より5割ほど長くなっていました。
長くなったぶんに何が入っていたのかは、中身を見ると分かります。
落ちた相手に内定を明かした人の20.0%が、運がよかっただけだと控えめに言ったり、申し訳なさをにじませたりしていました。
同じ内定でも、相手が落ちていると、言葉に緩衝材が挟まるということです。
やわらげ方は、言葉だけではありませんでした。
相手が落ちて自分だけが受かっていた場面では、内定を明かした人の40.0%が、まず相手を気づかう言葉を書き、自分の結果はそのあとに置いていました。
悪い知らせどうしなら自分の結果はすぐ出せるのに、自分だけが良い結果だと、切り出すまでに一段階挟まるということです。
なかには、言葉や順番をやわらげるのではなく、嘘をついてしまう人もいました。
同じ場面で内定を伏せた人のうち、26.5%は黙るだけでなく、まだ結果を待っているところだと書いたり、そもそも面接ではなく友人に会いに来たことにしたりと、事実と違う内容を書いています。
では、そこまでして何を守っていたのか。
自分の判断の理由を書いてもらった別の実験が、その答えを見せてくれます。
相手が失敗して自分が成功していた場面では、58.7%が相手を傷つけたくないという趣旨を挙げていました。
二人とも失敗していた場面では、38.2%が相手を助けたいという趣旨を挙げています。
自慢だと思われたくない、笑われたくないといった自分の見え方への言及は、はるかに少数でした。
守ろうとしていたのは、自分の評判よりも、目の前の相手の気分だったのです。
これらは場面を参加者の頭の中で想定してもらった結果ですが、見知らぬ者同士を3分間のチャットでつないだ473組でも、話すか伏せるかの偏りは同じでした。
参加者は実際に課題を解き、本当にボーナスを得たり逃したりしています。
相手がボーナスを逃したと打ち明けたとき、自分も逃していた人は、96.2%がそれを口にしました。
ところが同じ相手を前にして、自分はボーナスを得ていた人が、それを口にしたのは39.8%です。
落ち込んでいる相手を前にしたとき、自分の結果が良いか悪いかだけで、打ち明ける人の割合は2倍以上も違っていました。

























