IQが高くても、困りごとが消えるわけではない

最後に研究チームは、1100人の子どもを、ふだんの勉強や人づきあいでどれくらい困っているかをもとにグループに分けました。
保護者が答えた「生活の困りごと」の点数から、データの中に自然にできるまとまりを統計の手法で探したのです。
すると、子どもたちは3つのグループに分かれました。
1つ目は「困りごとが軽い」グループで、IQがいちばん高く、勉強の問題もいちばん少ない子たちです。
ところがこのグループの子どもたちにも、はっきりした衝動性が見られました。
知能が高くても、ADHDの症状がすべて消えるわけではなかったのです。
2つ目は「勉強の困りごとが重い」グループで、IQがいちばん低く、不注意もいちばん強い子たちでした。
この子たちは衝動性がほとんど目立たず、行動を止めることよりも、集中することや学ぶことに大きな困りごとを抱えていると見られます。
3つ目は、IQも症状の重さも、その中間にあたるグループです。
この分け方から、IQが高ければ人づきあいの困りごとも自然に少なくなる、というわけではないことが見えてきました。
IQが高いADHDの子も、平均的なIQの子と同じくらい、人づきあいで苦労している場合があるのです。
以前から一部の研究者は、知能の高さが困りごとを見えにくくして、診断を難しくすることもあると考えていました。
研究チームは、IQがどの面でも同じように子どもを守ってくれるという見方は当てはまらないとしています。そのうえで、特にIQが高い子では、衝動を止める力の弱さに目を向ける必要があると述べています。
では、なぜ言葉の力が高いと衝動性が強めに出るのでしょうか?
この研究を紹介した海外の科学ニュースでは、ひとつの可能性が挙げられています。
言葉の力が高い子は、人とのやりとりをすばやくこなせるのかもしれません。
そのすばやさが、知らないうちに、考える前に動くやりとりのくせを強めていくこともありうる、という見方です。
ただしこれはあくまで仮説で、今回の研究で確かめられたことではありません。
少なくとも、IQの高さだけを見て「この子は大丈夫」と決めてしまうのは、早すぎるのかもしれません。
答えを言いたくてうずうずしているあの子の手は、頭の回転に体が追いつこうと、全力で走っている最中なのかもしれません。




























