紙の電池はどうやって電気を生み、分解される時期を決めるのか

電池には、マイナス側の極(負極)とプラス側の極(正極)があります。
今回の電池は、負極にマグネシウムの合金を、正極に三酸化モリブデンと活性炭を使いました。
論文によると、マグネシウムは体積あたりにためられるエネルギーが大きく、値段も比較的安い金属です。
この負極と正極の組み合わせ自体は、分解される電池の試作で以前から使われてきたものです。
2つの極の間には、電池が電流を生むのに欠かせない「電解質」を挟みます。
研究チームは電解質に、塩化コリンと乳酸を溶かし合わせて作った、分解されるゲル状の液体を使いました。
以前の研究には塩水に近い液を電解質にした例もありましたが、ためられる電気が少なく、働きも安定しにくかったといいます。
そして新しいのが「紙」にした点です。
正極の材料を固めるのりには、これまで粒の大きなものが使われていました。
そのせいで電極が分厚くなり、分解にも時間がかかっていました。
そこで研究チームは、のりをセルロースナノファイバー(セルロースでできた、ごく細い繊維)に替えました。
こうしてできたのが、薄くて小さな穴がたくさん開いた、紙のような電池です。
このセルロースも、分解する酵素があれば、体の中に近い条件で糖にまで分解されます。
トラベルソ教授は「紙の構造のおかげで、電気を生み出す力を保ちながら、電池の丈夫さと分解の具合を調節しやすくなる」と説明しています。
もう1つの工夫が、電池を包むロウです。
胃の強い酸ですぐに分解されないよう、研究チームは電池をミツロウで覆いました。
一部の電池には、砂漠に育つ低木からとれるカンデリラワックスも重ね、もっと長く守れるようにしています。
トラベルソ教授は「ロウの膜はただの包装ではない。電池が働く期間を決める大事な部分だ」と話します。
つまりこの電池は、ロウの守り方しだいで「いつまで働き、いつから分解されるか」が変わるのです。
使った材料の量はどれも、1日にとってよいとされる量の範囲に収めてあります。
ただし、論文はひとこと断っています。
ここでいう「体に吸収される」は、体が処理できるものに分解されるという意味です。
食べ物として扱える材料だ、という意味ではありません。



























