星のなきがらに降り積もる「惑星のかけら」

太陽くらいの重さの星は、一生の終わりに大きくふくらんで「赤色巨星」になります。
やがて外側のガスを吹き飛ばすと、あとには小さく高密度な芯だけが残ります。
これが星のなきがら「白色矮星(はくしょくわいせい)」です。
大きさは地球とそれほど変わらないのに、重さは太陽の0.5〜1.4倍もある、とても熱い天体です。
あまりに高密度なため、ほとんどの元素は中心へと沈んでいきます。
そのため本来なら、表面の大気はほぼ水素とヘリウムだけになるはずです。
ところが白色矮星の4分の1から半分ほどには、ケイ素や鉄といった岩石の材料が混じっています。
これは、星にのみ込まれて砕けた惑星のかけらが降り積もったものと考えられています。
降り積もったかけらの中身はさまざまですが、全体としては太陽系の天体とよく似ています。
つまり白色矮星の大気は、かつてそこにあった惑星の中身をのぞく「窓」になっているのです。
今回の研究チームが注目したのは「HS 0209+0832」という白色矮星です。
この星は1999年にハッブル宇宙望遠鏡で観測された時から、正体不明の元素が混ざった“変わり者”として知られていました。
その後、星の大気の中で原子がどう見えるかの研究が進んだため、チームは古いデータを分析し直すことにしたのです。
白色矮星に降っていた“ありえない金属”の正体とは?

分析の結果、HS 0209+0832の大気には、ほかの白色矮星とはまるで違う中身が見つかりました。
岩石の材料であるケイ素はごくわずかしかなく、鉄はほとんど見当たらなかったのです。
その代わりに多く含まれていたのは、亜鉛や銅、そしてニオブといった鉄より重い元素でした。
ニオブは硬くて銀色に光る金属で、地球では珍しく、宝飾品やロケット、超伝導の材料などに使われています。
このニオブが白色矮星から見つかったのは、今回が初めてです。
しかもその量は、太陽に含まれるニオブの約1000倍にも達していました。
研究チームのジェイミー・ウィリアムズ氏(英ウォーリック大学)は「これほどニオブに富んだものは宇宙で見たことがない」と語り、「最初はかなり混乱した」と振り返っています。
手がかりになったのは、これらの元素がどこで作られるかでした。
ニオブなどは「sプロセス(遅い中性子捕獲)」と呼ばれる仕組みで作られます。これは主に、ある種の赤色巨星が大気を脱ぎ捨てて死んでいく中で起こる反応です。
鉄の原子核が中性子を取り込んでは変化することを繰り返し、より重い元素へと育っていくのです。この過程には数千年かかることもあります。
本来こうした元素は、白色矮星ができるときに外へ吹き飛ばされているはずです。
それが大気にまだ残っているということは、どこかから戻ってきていることになります。
そこで研究チームが考えたのが、死にゆく星が放り出した物質が集まって、新しい惑星が生まれたというシナリオです。
これが「第二世代の惑星」で、研究者たちは灰の中からよみがえる伝説の鳥になぞらえて「フェニックス(不死鳥)」の惑星と表現しています。
星が生まれたときからある普通の惑星(第一世代)は、ふつうはこれほど大量のニオブを持てないため、この量は第二世代のシナリオを支える証拠とされています。
共著者のニコラス・ストーン氏(米ウィスコンシン大学マディソン校)も「普通の第一世代の惑星なら持っているはずのない化学的な特徴だ」と述べています。
さらに、大気にはヘリウムが含まれ、地球のような岩石の材料は見当たりません。そこでチームは、白色矮星が取り込んでいるのは岩の惑星ではなく、ガス惑星から漏れ出した大気だと考えました。
この考えを後押ししたのが、系外惑星を探す宇宙望遠鏡「TESS」の観測データです。
白色矮星の明るさは、約4.4日の周期で、わずか0.12%ほど上下していました。
この周期は、白色矮星そのものの自転によるものとしては遅すぎます。
一方で、星のすぐ近くを回るガス惑星があるとすれば、うまく説明がつきます。
その場合、惑星は地球と太陽の距離の約4%、およそ600万kmという近さで、いつも同じ面を星に向けて回っていることになります。
明るさの揺らぎは、惑星の昼側と夜側の温度差か、蒸発するガス惑星から伸びる彗星のような尾が星の前を横切っているためだと考えられています。
木星ほどの大きさのこの惑星は、強い放射を浴びて大気をはぎ取られ、それを白色矮星が少しずつすすっているとみられます。
ウィリアムズ氏は、この惑星を「銀色の木星」のように思い描いているそうです。
つまり研究チームの考えでは、死んだ星のかけらから生まれた惑星が、今度はその星に少しずつ壊されていることになります。
白色矮星のまわりで第二世代の惑星の候補が見つかったのは、これが初めてです。
第二世代の惑星は15年以上前から理論的に予想され、パルサー(超新星爆発のあとに残る、高速で自転する天体)などのまわりでは可能性が議論されてきましたが、白色矮星では考えられていませんでした。
研究に関わっていない米ワシントン大学セントルイス校のジファン・リン氏は、このでき方はこれまで「仮説や推測に近かった」とし、「その過程の証拠を見たのは初めてだ」と話しています。
太陽が死んだあとにも、惑星は生まれる?

ただし、この結論はまだ確定したものではありません。
見つかったのはあくまで惑星の「候補」で、手がかりは白色矮星の大気の成分と明るさの変化です。
たとえば、最初からあった第一世代の惑星が重い元素で汚され、あとから内側へ移ってきたという可能性も残っています。
それでも研究チームは、赤色巨星の時期が終わったあと、白色矮星のまわりに落ち着いたチリやガスが円盤をつくり、そこから惑星が生まれた可能性のほうが高いとみています。
ウィリアムズ氏も「もし惑星でないとしたら何なのか、私たちにもわからない」「惑星がいちばん妥当な説明だ」と話しています。
また、このシナリオが成り立つのは、かなり特殊な状況に限られそうです。
星が1つだけで死ぬ場合、吐き出された物質はふつう四方八方に均等に散らばってしまいます。
そのため新しい惑星ができるには、散らばる前に物質を引き戻す相方の星(伴星)が必要だった可能性があります。
一方で、白色矮星はパルサーなどに比べてずっとありふれた天体です。
今回の手がかりが確かめられれば、ほかの白色矮星のまわりでも第二世代の惑星を探す新しい方法が手に入ります。
ウィリアムズ氏はすでにハッブル宇宙望遠鏡の観測時間を得て、さらなる候補探しに乗り出しています。
「1つ見つかったのなら、もっとたくさん見つかる可能性は十分ある」と彼は語ります。
そしてこの話は、私たちの太陽系の遠い未来ともつながっています。
太陽も約50億年後には赤色巨星となって水星や金星、もしかすると地球にも破滅をもたらし、やがて白色矮星になります。
第二世代の惑星についてはまだわからないことが多いものの、ウィリアムズ氏は太陽のなきがらのまわりに新しい惑星が生まれることも「十分ありうる」と考えています。
星の死は近くの惑星にとって破滅を意味することが多いですが、それが新しい世界の始まりになることもあるのかもしれません。
夜空に浮かぶ星のなきがらは、ただの燃えかすではなく、次の惑星を育てるゆりかごでもあるのかもしれないのです。




















