ポルノの悩みを測る「2つの物差し」

研究チームが注目したのは、「問題的ポルノ利用」と呼ばれる状態です。
これは正式な病気の診断名ではなく、見る量を自分でコントロールできない、ポルノのことが頭から離れない、見ることに苦しさを感じる、といった本人が報告する困りごとをまとめた言葉です。
大切なのは、どれだけ頻繁に見るかではなく、やめられない感じがあるか、強い苦しさや生活への支障があるかという点です。
ところが、この状態をどう測るかは、研究によって考え方が分かれていました。
ひとつは、「減らそうとしても減らせない」「悪い結果があっても続けてしまう」といった、自分を抑えられないことを中心に測る質問票です。
もうひとつは、罪悪感や恥ずかしさ、心配、道徳的な葛藤など、ポルノにまつわる心の苦しさを中心に測る質問票です。
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同じ「ポルノの悩み」でも、どちらの物差しを使うかで、見えてくる心の特徴が変わるのではないかと研究チームは考えました。
そこでチームは、2012年から2025年までに英語またはペルシャ語で発表された研究を、複数のデータベースから幅広く探しました。
3万8000件を超える記録から絞り込んだ結果、条件を満たしたのは97本の論文で、合わせて111の独立したグループ、12万1728人分のデータになりました。
参加者の平均年齢は約27.5歳、およそ46%が女性で、データのほとんどはオンラインで集められたものでした。
これらをメタ分析(複数の研究の結果を統計的にまとめる方法)で統合し、ポルノの悩みとさまざまな心の特徴との結びつきの強さを調べたのです。
ポルノに悩む人と強く結びついていた「心の特徴」とは?

では、ポルノとの付き合い方に悩む人には、どんな心の特徴が見られたのでしょうか。
結論から言うと6つの心の特徴は、悩みが強い人ほど、ポルノを見たいという強い欲求、性にまつわる恥の感覚、落ち込み、孤独感、感情を整えることの難しさ、そしてポルノを道徳的に悪いと考える気持ちが強い傾向にありました。
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なかでも結びつきがはっきりしていたのは「見たい」という強い欲求と性的な恥の感覚で、どちらも比較的強いつながりを示しました。相関係数(2つの値がどれだけ連動するかを示す数値で、−1から1の範囲をとり、ゼロに近いほど関係がないことを示します)は、ともに0.54です。
次いで、落ち込み、感情をうまく整えられないこと、ポルノを道徳的に悪いと考える気持ち、孤独感が、中くらいから弱めのつながりを示しました(相関係数は順に0.32、0.29、0.27、0.23)。
反対に、外向的かどうかという性格や、家庭環境とのつながりは、ほぼゼロでした。
つまり、ポルノの悩みは「見たい欲が強いかどうか」だけの話ではなく、恥や落ち込み、孤独といった心の重さと一緒に表れやすいということです。
ただし、これはあくまで「一緒に見られやすい」という関係で、孤独だからポルノに悩むのか、ポルノに悩むから孤独になるのかは、この研究からは分かりません。
また、最も強かった欲求と恥の結果は、それぞれ4〜5本の研究にもとづくもので、12〜21本の研究にもとづく他の特徴に比べると、まだ手がかりが少ない点にも注意が必要です。
さらに、研究ごとの結果のばらつきはとても大きいものでした。
今後同じような研究をしたときに結果が収まりそうな幅を計算すると、多くの特徴でその幅が広く、ほぼゼロの値まで含まれていました。
そのため研究チームは、今回の数字を「誰にでも同じように当てはまる効果」ではなく、「平均的な傾向」として受け止めるべきだとしています。
物差しを変えると、見えてくる心の特徴も変わるのか?

では、2つの物差しの違いは、結果にどう関わっていたのでしょうか。
自分を抑えられないことを中心に測った研究では、衝動的になりやすさや「見たい」という欲求とのつながりが強めに出る傾向がありました。
一方、心の苦しさを中心に測った研究では、恥やポルノを道徳的に悪いと考える気持ちとのつながりが強めに出る傾向がありました。
ただし、こうした違いは「そう見える」という段階のもので、統計できちんと確かめると、はっきりした差はほとんど確認されませんでした。
それでも研究チームは、測り方の違いが結果のばらつきの一部を生んでいる可能性があるとして、2つの物差しを区別することが、食い違う結果を整理する助けになると述べています。
ポルノとの付き合い方の悩みは、意志の弱さや欲の強さだけで片づけられるものではないのかもしれません。
その奥には、人に言いにくい恥ずかしさや、ひとりで抱えた落ち込みや孤独が、静かに寄り添っている場合もあるようです。
「ただ欲が強いだけ」と見ていたものの裏に、別の重さがあるかもしれないと知っておくだけでも、自分や誰かを見る目は少し変わるはずです。
とりあえず今夜は、スマホを枕元から少し遠くに置いて眠ってみるのもいいかもしれません。
もっとも、スマホを遠ざけすぎると、今度はアラームが聞こえずに寝坊するという、まったく別の悩みが生まれそうですが。




















