音だけでは差がつかず、光が加わると差が出た

音楽家の強みが現れるのは、音だけを聞くときなのか、それとも光が加わったときなのか?
研究者たちは、その二つを分けて測りました。集めたのは、楽器経験の豊富な35人と、ほとんど経験のない35人です。
ここでいう音楽家は、必ずしもプロではありません。7年以上の楽器経験があり、ここ1年も平均して週に1時間は演奏している人たちです。
実験に使われたのは、人形ではなく、一瞬の光と短い雑音でした。
暗くした部屋で、参加者は2メートル先の黒い幕に向かって座ります。
幕の裏には、横一列に5つのスピーカーが隠れています。音は通すけれど中は見えない幕なので、音の出どころは聞いて当てるしかありません。
光は幕に映り、音はスピーカーから鳴ります。参加者は、それがどこだったかをマウスで指し示しました。
音だけの回、光だけの回、両方を出す回があります。両方の場合、光と音は同時に現れますが、場所は同じこともあれば、離れていることもあります。
このとき参加者は、音の位置だけでなく、光の位置も別々に答えました。
目と耳の両方に注意を向けてもらうためです。光と音が離れている回で、音の答えがどれだけ光の側へ寄るか。それが測りたいものでした。
まず、音だけ、あるいは光だけを出したときには、答えのばらつきに音楽家と、そうでない人の差はありませんでした。
ところが光と音を一緒に出すと、違いが現れます。音楽家では、音の位置の答えが光の側へ引っ張られる程度が、平均して小さかったのです。
光と音が離れているときほど、音は強く引き寄せられます。最も離れた条件では、音だけのときに比べ、両者の隔たりの半分ほど光の側へ寄っていました。
音楽家でも錯覚は起きますが全体を平均すると、その寄り方が1.6度ぶん小さいという差でした。
隣り合うスピーカーの間隔が5度ですから、その3分の1ほどにあたります。
差が出たのは、耳だけを使う場面ではなく、目と耳を組み合わせる場面でした。
これでは、「音楽家は音の位置を正確に聞き分けられるから」という説明だけでは足りません。
そこで研究者たちは、参加者の答え方を数式で再現するモデルを使い、二つのことを見積もりました。
一つは、目と耳がそれぞれどれくらい細かく位置を捉えているか。
もう一つは、「この光と音は、同じ出来事から来たはずだ」とどれくらい見込んでいるか、です。
すると音楽家と、そうでない人を分けていたのは、後者の見込みの部分であることがわかりました。
音楽家では、音と光を同じ出所と見込む度合いが弱かったのです。位置を捉える細かさのほうには、差は出ていません。
さらに研究者たちは、同じ課題をもう一度やってもらう前に、参加者にこう伝えました。
「光と音の両方が出るとき、同じ場所から出るのは2割です。残りの8割は、別々の場所から出ます」
これは本当の割合です。課題の途中でも、繰り返し確認させました。
すると、全体として錯覚が弱まりました。同じ出所と見込む度合いも、全体として下がっています。
それでも、音楽家と非音楽家の差は消えませんでした。
しかし、確率を聞かされただけで、なぜ音のありかの答えまで変わるのでしょうか。




