AIが見つけた酵素に生物学者が「自分の研究では」と疑問
AIが見つけた酵素に生物学者が「自分の研究では」と疑問 / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部
artificial-intelligence

AIが見つけた酵素に生物学者が「自分の研究では」と疑問

2026.10.13 13:30:00 Tuesday

会議で自分が口にしたアイデアを、数分後に別の人が自分の思いつきのように話し始めると、なんとも言えないモヤモヤが残るものです。

AI企業のAnthropic(アンスロピック)は最近、同社の人気AI「Claude(クロード)」が、珍しい酵素のグループを見つけたと発表しました。

この成果は、AIが生物学の発見を切り開いた例として紹介されています。

ところが、同じ酵素を研究していたある研究者が、ひとつの疑問を投げかけました。

それは「AIは本当に自力でこの酵素の重要さに気づいたのか、それとも自分がAIに見せた未発表の研究が影響したのではないか」というものです。

AIの「大発見」は、いったいどこまでがAI自身の手柄だったのでしょうか。

専門家の解説をもとに、この問題を整理していきます。

この話題の詳細は2026年10月8日に『Phys.org』にて公開されました。

A biologist queries whether AI 'borrowed' his work to make major discovery—an expert explains the rules (Phys.org) https://phys.org/news/2026-10-biologist-queries-ai-major-discovery.html

AIが見つけたとされる「ウイルスの酵素」

AIが見つけたとされる「ウイルスの酵素」
AIが見つけたとされる「ウイルスの酵素」 / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

今回話題になったのは、「逆転写酵素」と呼ばれるタンパク質の仲間です。

酵素とは、生き物の体の中で化学反応を速めるはたらきをもつタンパク質のことです。

中でも逆転写酵素は、RNAという1本鎖の分子を写し取って、生命の設計図を担う2本鎖のDNAに作り変える役割をもちます。

研究の現場や診断検査でも使われており、一部の新型コロナウイルスの検査もこの酵素の力を借りています。

Anthropicによると、Claudeはこの逆転写酵素の中から、細菌に感染するウイルス「バクテリオファージ」が持つ珍しいグループを見つけ出しました。

同社はこれを「アレイ関連逆転写酵素(ART)」と名付けています。

ここで声を上げたのが、デンマークのコペンハーゲン大学で計算生物学を学ぶ博士課程の学生、マリオ・ロドリゲス・メストレ氏です。

メストレ氏によると、彼のチームは2022年からこの酵素を「ジャンボトロン」と呼んで研究してきました。

さらに科学誌の報道によれば、メストレ氏は自分の博士論文や論文の下書きをClaudeに見せていたといいます。

これに対してAnthropicは、モデルを利用者とのやり取りで訓練したことも、同社の生物学チームがそのやり取りを閲覧できたことも否定しています。

メストレ氏の疑問と同社の否定がぶつかり、話はここから少し込み入ってきます。

次ページAIの「手柄」は、どこまでだったのか?

<

1

2

3

>

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

AI・人工知能のニュースartificial-intelligence news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!