・3人の脳波をリンクさせることで脳内ネットワークを共有し、テトリスなどのゲームにおいて脳波だけで指令を送ることができるデバイスが開発される
・2人が「送り手」となり、1人の「受け手」に対してツールを用いることで、脳波を通じて指令が伝達できる
・これがインターネットを介して利用されるようになれば、世界的に複数人で「脳内ネットワーク」を共有することができる可能性がある
自分の「思考」を他者に対して言葉を介さず「ダイレクト」に伝える能力は、これまでSFの世界の中だけの話でした。
しかし、それはもはや過去の話になるかもしれません。近年、物理学者と神経科学者がタッグを組み、脳から脳へ直接「思考」を伝えることができるツールが開発されました。
BrainNet: A Multi-Person Brain-to-Brain Interface for Direct Collaboration Between Brains
https://arxiv.org/abs/1809.08632
ワシントン大学のアンドレア・ストッコ氏は、もともと2015年に「2人」の被験者の間にこのツールを用いることで、この「無言のコミュニケーション」にある程度成功していました。
そして今回、ストッコ氏らの次なるステップとして「3人」でこのツールを用いて、複数人で脳内のネットワークを共有することに成功しています。彼らが「BrainNet」と呼ぶそのネットワークにより、テトリスのようなゲームを協力的に進めていくことができるのです。
スコット氏らは、3人の脳内にダイレクトに情報を往来させるためのネットワークを創り上げたことになります。そして彼らいわく、そのネットワークの測定は容易であり、EEG(脳波図)やTMS(経頭蓋磁気刺激法)デバイスの利用可能性によってのみ制限を受けます。
3人の間でどのようなことが行われているのかを、テトリスを例に説明すると、送り手(sender)2人についてはスクリーンを見ながらEEG(脳波図)を測定。落ちてくるブロックをいつ回転させるのかを3人目のメンバーに伝えます。
スクリーンには異なる頻度で点滅する2つのLEDライト(15ヘルツと17ヘルツ)が取り付けられており、送り手はそのどちらかに集中することによって自らの脳波をコントロールするのです。
一方、受け手(receiver)は異なるタスクを実行。受け手のスクリーンは「上半分」しか見ることができませんが、送り手からの「回転」、「無回転」の指令シグナルを、TMS(経頭蓋磁気刺激法)を通じて感じることができます。
今回の実験では「3人」によるネットワークの共有でしたが、このツールが改良され、インターネットを介して利用が可能になれば、世界規模での「テレパシー」が可能になります。人間のコミュニケーションは新たな段階へと向かっていると言えるのかもしれません。
via: technologyreview / translated & text by なかしー