・「記憶を操作する技術」が実現に向けて加速している
・植え込み式のデバイスで記憶に関わる脳波に影響を与えることで、記憶を書き換えることが可能になる
・この技術がPTSDなどの治療に役立てられることが考えられるが、その開発は「悪用されること」を十分考慮に入れて行われるべきである
「記憶の操作」は我々人類、特にSF好きの人々にとっては長年の夢でした。それもそのはず、そんなことが可能になれば、私たちは過去の「つらい記憶」を消して「幸せな記憶」を創り出すことだってできてしまうのです。
そして、そんな神をも恐れぬ行為が「現実」に近づいていることをオックスフォード大学の研究者らが明かしています。記憶に関わる脳波を、電気刺激によって操作するというのです。
The Memory Market:Preparing for a future where cyberthreats target your past
その基礎となる技術はすでに存在しています。それはパーキンソン病などの治療に用いられる技術で、脳に「パルス発生装置」を植え込むことで、脳内のターゲットに向けて刺激を発生させます。
この技術がさらに発展して実用化されれば、ストレスの元凶となっている記憶を取り除くことで、健忘症や心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療に役立つことが考えられます。
こうしたポジティブな活用法は数多くありますが、記憶を操る技術はあまりに強大な力を持っています。つまり、記憶を「売る」リコール社が登場するアーノルド・シュワルツェネッガー主演の映画『トータル・リコール』の世界が現実になるかもしれないのです。
それは自分の記憶を頼りにできない未来の到来を意味しています。その未来では、自分の脳が「ハッキング」を受けて、誤った記憶を植え込まれる危険性も考えられるでしょう。しかし研究者らは、この技術の実現は「時間の問題」であることを述べています。
科学者らは、10年後には「記憶増強装置」が市場に出回る可能性があり、20年以内にはその技術が「記憶の操作」にまで及ぶことを予想しているとのこと。
皆さんはこれを「エキサイティングなニュース」と受け取るでしょうか。それとも、警戒心や恐怖を抱くでしょうか。人間にとって記憶は、その人そのものといっても過言ではありません。記憶すべてが疑わしいものとなったとき、人間の存在そのものが揺さぶられることとなるでしょう。
via: dailymail, intelligentciso / translated & text by なかしー