■子どもは12歳に達する時点で、社会的影響を受けやすくなり始めることが判明
■12歳以上の子どもは、誤った情報を受け入れがちで、それに従うかどうかの意思決定に時間が掛かる
■12歳未満の子どもや自閉症の子どもは、情報の発信者が誰であっても、その影響を受けにくい
みなさんが意識的に空気を読み始めたのはいつからですか?もしかしたらその境目は、12歳かもしれません。
ある国際研究チームが行った調査で、子どもは12歳に達する時点で、社会的影響を受けやすくなり始めることが明らかになりました。論文は、雑誌「Proceedings of the National Academy of Sciences」に掲載されました。
https://www.pnas.org/content/early/2019/01/24/1808153116
間違っていると感じても従う?誤った助言による錯覚
一般的に、ヒトは社会影響を受けやすい生き物だと認識されています。私たちは、他者から得た情報をそのまま信じたり、それが明らかに間違っていてもその影響を受けて行動したりします。研究チームは、人が何歳ごろからこうした社会的影響を受けやすくなるかを調べようとしました。
彼らは、6〜14歳の子ども155名(自閉症の子どもを含む)を対象に、あるゲームを用いた実験を行いました。ゲームでは、子どもたちがパイロットになりきって宇宙船を操縦しますが、途中で出現するブラックホールを上手く避けるため、宇宙船内の円柱を正しい方向に回転させなければなりません。円柱をどちらの方向へ回せばよいかを知るために、子どもたちはブラックホールの回転方向を知る必要があります。
また、それぞれの子どもには1人のアドバイザー(大人または同年代の子ども)が割り当てられており、ゲームの最中にブラックホールがどの方向に回転しているかについての助言を子どもに与えました。ただし、アドバイザーはいつも正しい助言を与えるとは限らず、時にはわざと誤った助言を与えることもありました。
このゲームの思いがけない落とし穴は、子どもたちにはブラックホールの回転方向が実際には「見えている」ということ。アドバイザーの助言があることで、ブラックホールの回転方向があたかも「見えていない」かのように感じる錯覚が生じるのです。
実験の結果、12歳以上の子どもは、アドバイザーからの助言の影響を、たとえそれが間違っていたとしても、もっとも受けやすいと判明。また、誤った助言に従うかどうかの意思決定に時間が掛かることも分かりました。
一方で、12歳未満の子どもには、アドバイザーが大人か子どもかにかかわらず、助言を無視する傾向が見られました。また、自閉症の子どもは年齢に関係なく、アドバイザーが大人であっても子どもであっても、その助言を無視する傾向があることが分かりました。
「自分が正しいと思うことを行う」のが子どもだとしたら、「自分は正しいと思っていなくても周りがそう言うからそれに従う」のが大人ということでしょうか…。ですが、他者の意見の影響を受け、周囲の空気を読んで、世の中に染まっていくことは、大人への階段を上ることと等しく、だからこそ世の中の協調が保たれているとも言えます。
大人の世界は、ちょっぴりほろ苦くて、複雑です。皆さんが世間の荒波に揉まれ始めたのはいつでしょうか?
reference: medicalxpress / translated & text by まりえってぃ