恐怖心の鍵は、心理的なバランス感覚
要するに、怪奇現象を「否定しようとする心理」と「肯定しようとする心理」とのバランスを、心理的なバランス感覚といいます。例えば、夜中に家の外で物音がすると、「風の音か、猫のいたずらだ」と冷静に判断すると同時に、「泥棒か殺人鬼の足音かもしれない」という可能性をわずかながら考慮しているのです。
恐怖心は、ある程度事態を把握できる理性的な態度と、実際に何が起こるかは分からない感覚的な態度との間で高められていきます。実は、私たちの「恐怖感覚システム」は、現実にありそうなことよりも、非現実的な方向へと想像力を働かせることの方に重きを置くのです。
クレイスン氏は「ありえそうにないことを想像することは、身に迫る危険性を把握するのに役立つ」と説明しています。つまり、恐怖心は、動物にとって重要な生存本能であり、人間が繁栄したきっかけでもあるのです。
人間が地球上で最も強大な力を得ることになったのは、勇敢に戦う「闘争心」以上に、恐怖に駆られて逃げる「逃走心」を重要視したからだといえるでしょう。