ナチスの原爆開発は滞っていた!?
ケース氏と研究チームの調査によると、キューブ内の放射性同位体の比率は普通のウラン鉱石に見られるものとほぼ一緒で、そこには核分裂生成の兆候も連鎖反応を刺激する危険性もまったくなかったとのこと。
つまりナチスの原子爆弾開発はあまり進展していなかったことがうかがえる。たとえキューブの質を向上させることができたとしても、原子爆弾を作るには量があまりに少ないのだ。
ところがケース氏は驚くべき事実を知った。
ナチスはB-Ⅷ原子炉以外に2つの場所で原子爆弾の開発を進めており、それぞれに数百個の核キューブがあったというのだ。ハイバート氏は「もしナチスが3つの研究所を協力させて開発を進めていれば、原子爆弾はアメリカよりも先に完成していたかもしれない」と指摘する。
アメリカはマンハッタン計画という1点に集中し、共同開発を進めていた。しかしナチスは自国内で分裂して競争的に研究を行なっていたのだ。両国の明暗を分けたのはこの点だったのだろう。