ヤブガラシ「おっと危ない」
矢野氏らは、アサガオのつるとヤブガラシの巻きひげが、ハダニがいる植物をそれぞれどのように避けるかどうかを調査。
つるや巻きひげの動きの方向を見極めて、予測進路にハダニがいるマメ株またはいないマメ株を置いて、巻きつく割合を比べた。
すると、アサガオはどちらにも巻き付いてしまったが、ヤブガラシの巻きひげはハダニがいるマメに触れると激しく縮れて離れ、巻き付かないことが判明。
この結果は、つる草がハダニのいる植物に巻きつくのを止めてハダニの「接触感染」を防ぐことを示す初めての例だ。
ではヤブガラシは何に反応してハダニを避けているのだろうか。
さらなる実験の結果、ヤブガラシは加害されたマメの匂いや巻きひげに侵入するハダニではなく、ハダニが植物表面に張る網を感知して避けることがわかった。
このヤブガラシの『賢さ』を逆手にとれば、アサガオなどの『賢くない』栽培植物は巻きつくが、『賢い』雑草は巻きつきにくい…といった、夢のフェンス素材が開発できるかもしれない。
また今回の研究で特筆すべきは、研究者のユニークな視点だろう。彼らは「ハダニがいる植物をつる草が避ける現場を目撃したから」発見できたのではなく、「ハダニがいる植物をつる草が避けるべきだと理詰めで予測して調べたら、本当にそうだった」という。
「あるがままの世界を観察して面白い現象を探すのもひとつの方法ですが、生き物は賢いはずだという色眼鏡で世界を眺める方法も楽しいですよ」とコメントしている。
研究内容のリリースでは、実験で使ったコマ落とし撮影方法の説明や、夏休みの自由研究にオススメする1文もあった。非常に親しみのある文体で書かれており、研究者の生き物への敬意と研究への愛がより身近に感じられた研究だった。
何者にもなれなかったアサガオのためにも、つる草を見かけたらその賢さを観察して確かめてみて欲しい。