Point
■謎の芸術家バンクシーが「水の都・ベネチア」で新作を無断で出店する動画が公開される
■タイトルは『ベニス・イン・オイル(油まみれのベネチア)』で、近年深刻化するベネチアの環境汚染を風刺している
■当地では国際美術展が開催中だったが、バンクシーは無断出店だったため地元警察に退去を命じられた模様
今度は「水の都・ベネチア 」にボムか⁈
「芸術テロリスト」と称される謎の芸術家バンクシーがイタリアの観光地ベネチアに現れ、新作を露店した。
ところが無断出品だったため、地元警察に退去を命じられてしまったようだ。
その一部始終をまとめた動画が今月22日に、バンクシーのインスタグラム上で公開されている。
ベネチアの環境汚染を風刺
しかし風刺芸術家であるバンクシーがなぜベネチアに現れたのか。「水の都」と称されるベネチアは世界有数の観光名所であり、美しい場所として知られている。
ところが近年、ベネチアでは大型客船による環境汚染が深刻化しつつあるのだ。ベネチアの中心地は観光客を乗せた大型客船のターミナルとなっており、毎日5〜6隻が入港する。
しかし客船には重油が燃料として使用されており、その中には硫黄分やPM(粒子状物質)が多く含まれている。そのせいで海水や大気の汚染、さらには地元住民の健康に深刻な被害を与えているのだ。
どうやらバンクシーはこれをターゲットにボムしたようである。
新作のタイトルは『ベニス・イン・オイル(油まみれのベネチア)』。いかにもバンクシーらしい皮肉っぷりだ。
バンクシーが無断で絵を出店したのは、ベネチア観光名所のサン・マルコ広場。当地では今月11日から国際美術展「ベネチア・ビエンナーレ」が開催されており、広場でも多くの芸術家たちが絵を出店していた。
バンクシーはそこにこっそり潜入したようだ。
インスタグラムでは「世界で最も大きく権威ある美術イベントだが、どういう理由か私は一度も呼ばれたことがない」と流石の皮肉めいた発言をしている。
『ベニス・イン・オイル』は9枚の油絵を組み合わせることで、ベニス運河に入港する巨大なクルーズ船が現れる仕組みとなっている。なぜ9枚に分けているのかはバンクシーのみぞ知るだ。
『ベニス・イン・オイル』は露店という形を取っているので、実際に買おうと思えば買えてしまうだろう。もしかしたら簡単に買われてしまったら困る…といった意図があるのかもしれない。
動画を見ても、客は絵にほとんど興味を示すことなく通り過ぎている。
結局その後、バンクシーは無許可で絵を出店していたため地元警察に退去を命じられ、荷物をまとめその場を去ったようだ。
絵を売らず、皮肉るだけ皮肉って、警察に怒られ、姿を消す。
すべてはバンクシーの計算通りだったのかもしれない。