Point
■フランス北東部の地域で、ハムスターが共食いをするおぞましい例が報告されている
■偏食によってビタミンB3が不足したことが異常行動の原因であるとされる
■偏食のきっかけとなったのは人間による農地拡大であり、人間こそがこの事態の大きな責任を負っている
人間同様、ハムスターもビタミンB3不足に悩まされているようです。
一般的に、野生のハムスターは共食いをする動物ではありません。しかし研究者たちはフランス北東部の地域において、「ハムスターの母親が生まれた赤ちゃんを生きたまま食らう」ケースがあることを明らかにしました。
研究は2017年の「Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences」に掲載されている。
Diets derived from maize monoculture cause maternal infanticides in the endangered European hamster due to a vitamin B3 deficiency
https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rspb.2016.2168
原因は人間による農地拡大
可愛い顔をしたハムスターからは想像もできない所業ですが、 研究者らはその原因がハムスターの「食糧」、特にトウモロコシがハムスターを共食いに走らせていたことを発見しました。
かつてその地域に生息していたハムスターは、穀物、植物の地下茎、昆虫などを食していました。しかし大規模な工業型農業が地域を席巻し始めると、トウモロコシ以外の食糧がハムスターに残らなくなったのです。
こうして、主にトウモロコシのみで飢えをしのぐ運命となったハムスターたちですが、トウモロコシには重要な栄養素が不足していました。それはビタミンB3、すなわちナイアシンです。
ビタミンB3の不足は、ペラグラと呼ばれる症状を引き起こすものであり、ペラグラは認知症の原因になるとされています。
さらに、未調理のトウモロコシをベースとした食事と、人間の暴力的な行動を関連付ける報告もあります。そうした行動の中には、殺人や自殺、そしてカニバリズム(食人)が含まれているのです。
つまり、人間においてみられたトウモロコシが原因のそうした傾向が、ハムスターにも現出したことが考えられます。