殺人鬼をアンチヒーローとして描かない
しかし一方で、こうした凶悪事件を扱う番組にはつきものの根本的な問題がある。それは「実際に誰かに降りかかった不幸な出来事をエンターテインメントとして一般に届けて良いのか」ということだ。
この問題についてドローン氏は「番組を作る際に一つの倫理的な決まりを自分で設けている」と話す。それは殺人鬼たちがエンターテインメントとして人気を持たないように報じるということだ。
これまでの歴史の中では、残念ながら冷酷な殺人鬼たちが社会のアンチヒーローとしてもてはやされてきた実例が存在する。例えば、ジャック・ザ・リッパーやチャールズ・マンソン、テッド・バンディなどがその代表例だ。彼らは映画や小説、ゲームの中で間違ったカルト的人気を持ってしまった。
ドローン氏は「彼らが犯した罪の詳細を知らずに大まかな報道イメージだけで捉えてしまうことが問題なのだ」と指摘する。
そのため「Obscura」では、殺人鬼たちがアンチヒーローとして受け入れられないように注意して制作を行っている。
例えば殺人鬼の巧妙な手口を事細かに描写しないこと、それから犯罪者に畏敬の念を抱かせないような語りをすることが重要視されているようだ。
殺人鬼を扱ったほとんどの小説・映像作品ではこの点を犯してしまっている。例えば、『羊たちの沈黙』のハンニバル・レクター博士などもその一つだろう。
こうしたこだわりによって、女性リスナーでも嫌悪感を抱かずに聴けるのだろう。間違いなく「Obsucura」の人気を支える骨子の一つだ。
ポッドキャストのエピソード一覧は、以下のリンクから視聴することができる(英語音声)。
https://www.obscuracrimepodcast.com/