プロエンケファリンを加水分解してエンケファリンへ
研究チームがマウスにブロメラインを経口投与したところ、小腸の一部である空腸のプロエンケファリン値が下がり、その代わりに血中のエンケファリン値が上昇した。
このことは、体内に取り込まれたブロメラインが、プロエンケファリンを分解することで、小腸からエンケファリンを分泌することを意味する。このエンケファリンが血流に入り、その周辺に抗炎症と鎮痛の作用をもたらすのだ。
また、ブロメラインの濃度についても興味深い事実が判明した。濃度3mg/kgのブロメラインの鎮痛効果は3時間後にピークを迎え、それ以上濃度を上げても逆に効果が弱くなったのだ。これは、商業用のブロメラインには他のタンパク質分解酵素も含まれているために、エンケファリンの加水分解が起きるからではないかと考えられている。

このプロセスを解明するには、ブロメラインがプロエンケファリンを分解する仕組みを理解することが不可欠だ。パイナップルの茎から抽出されるブロメラインは、タンパク質を主にアルギニンとリジンのアミノ酸対に分解する。プロエンケファリンには、これらのアミノ酸対が側面に位置する7つのエンケファリンの配列が含まれている。
化学合成したプロエンケファリンにブロメラインを加えたところ、アミノ酸が加水分解される際に、エンケファリンが分泌されることが分かった。
モルヒネがエンケファリンと同じ受容体に作用することからも分かるように、ブロメラインとモルヒネの効果は非常によく似ている。ブロメラインは、腸内微生物叢と腸表面の間でどんなやり取りが行われているかを知る上で、重要な鍵となるだろう。
研究チームは今後、食べ物だけでなく、タンパク質分解酵素を生産する微生物叢についても分析を行う予定だ。